医師インタビュー

【水島協同病院/内科&総合診療専門研修指導医インタビュー】全専攻医の相談役が語る「サポート体制&求められる医師の資質とは?」

私がお答えします

【 山本 勇気(やまもと ゆうき)医師 】
出身地:岡山県
卒業大学:岡山大学医学部
2007~2008年 水島協同病院初期研修
2008~2011年 水島協同病院内科専門研修
2011~2014年 神戸大学病院感染症内科
2014~2019年 倉敷中央病院臨床検査・感染症科
2019年~ 水島協同病院救急総合診療科科長/診療部副部長/医師臨床研修センター長/初期臨床研修プログラム責任者

<資格>
日本内科学会総合内科専門医

内部上がり&外部専攻医が多く、若手が活躍する環境

水島協同病院の専攻医の募集枠と受け入れ実績

── 山本先生の出身と経歴を簡単に教えてください

山本医師: 私は岡山県生まれで、岡山大学を卒業しました。初期研修、専門研修も岡山で受け、その後は兵庫県の神戸大学病院感染症内科で修業。そして、また岡山に戻り、倉敷中央病院に入職しました。
新専門医制度が始まった翌年の2019年に当院に戻り、試行錯誤しながら内科と総合診療の専門研修プログラムを構築しています。

── 現在は専攻医の指導、初期臨床研修プログラム責任者を兼任なされていますね

山本医師: 内科、総合診療の専攻医については相談役というポジション。業務外を含む専攻医のさまざまな困りごとを聞く、メンター的な立ち位置で、指導医はまた別にいる、というパターンもあります。

── 救急総合診療科の科長にも就いていらっしゃいますね

山本医師: はい。私は内科の後期研修が終わった後、神戸大学で感染症について研鑽を積みました。循環器内科や神経内科と比べると、すこしわかりにくい専門領域です。感染症を学ぶ時にはほぼすべての科から相談を受け、広い領域の疾患を経験できました。その経験は、さまざまな疾患が診断のつかないまま来院する救急外来での診療に役立っています。

── 山本先生は内科と総合診療の専攻医の両方を指導しているのでしょうか

山本医師: 内科には、私の他にも循環器内科、神経内科、腎臓内科を専門とした指導医も在籍。各先生の専門に応じて、タイミングや患者さんの状態に合わせて指導者を決めています。内科専攻医の指導としては、一人の指導医として教えています。
総合診療専攻医は、私自身が救急総合診療科の科長ということもあって、内科よりも深く、専門的に関わって指導しています。

── コモンディジーズも多いでしょうか

山本医師: はい。内科、総合診療科の症例は半数以上が救急外来経由の入院なので、専門特化した症例よりもコモンディジーズが多いです。
他の病院からローテーションしてくる専攻医の中には、前の病院では専ら専門領域の症例ばかり担当していたため、当院に来て「○○穿刺は研修医の時以来やったことがない」ということもあります。そういう場合には、未経験の症例、領域、手技を積極的に担当してもらうように意識しています。当院の研修の特徴・強みは、幅広い症例を「自ら主治医として」担当できる点だと考えています。

──  新専門医制度が始まってから現在までに受け入れた専攻医は何名いますか

山本医師: 当院では、毎年内科3名程度、総合診療2名の合計5名の受け入れ枠を持っています。新専門医制度開始から現在までの受け入れ実績は、通算で内科2名、総合診療4名です。

── 初期研修からそのまま専攻医になった先生と、外部で初期研修を受けて専攻医から水島協同病院に入った先生の人数を教えてください

山本医師: 通算の実績としては、初期研修から残った医師が4名、外部病院からやってきた専攻医が2名です。2025年度入職予定の内科専攻医1名は、外部の病院出身です。

── 総合診療専攻医のほうが多いのですね

山本医師: はい。当院にやってくる初期研修医は、専門領域に特化してバリバリ頑張りたい感じではないことが多く、「水島協同病院の初期研修2年が終わったけど、そのまま残って次は総合診療プログラムに進もうかな」といった流れで専攻医として残ってもらえているのだと思います。初期研修で経験した当院総合診療が、当初のイメージ通りだったからそのまま残っているパターンですね。

── 外部からの専攻医の受け入れはいかがでしょうか

山本医師: 医療的に関連性が強く、立地的にも距離が近い倉敷中央病院から、通算28名の専攻医が当院で学んでくれています。年間3~5名、3ヶ月から半年毎で、循環器内科、呼吸器内科、腎臓内科の専攻医が主です。私自身も倉敷中央病院での勤務経験があり、現在も在籍されている先生方に症例の相談や、外部講師として講習や勉強会の依頼をさせていただいています。2025年度からは、川崎医科大学附属病院所属の専攻医を受け入れる予定です。

── 専攻医1年目から外来に入るのでしょうか

山本医師: はい。早い専攻医は、1年目4月から外来に入ります。いずれの専攻医も、まだ診断がついていないケースや、軽症の患者さんの担当から始まります。

指導体制と職場の雰囲気は?

── 水島協同病院で働く医師の年齢層について教えてください

山本医師: 近年は専攻医の人数が増えて、比較的若年の医師の割合が増しています。経験豊富なベテランの先生方もたくさんいるのですが、その結果、中堅医師の割合が少なめです。20代、30代前半が活躍できる中小病院ですよ。

── 当直の指導体制はいかがでしょうか

山本医師: 専攻医は、必ず指導医や上級医とペアになって当直に入ります。

── 複数の指導医の先生方に相談できる環境でしょうか

山本医師: はい。基本的には、専攻医1名に担当指導医が1名となっていて、その都度サポートしています。ときには、指導医の先生が不在だったり、指導医の専門から外れた疾患を受けたりするので、他の先生にも柔軟にサポートしてもらえる体制を敷いています。

── カルテ記載の指導はありますか

山本医師: カルテに関しては、内科・総合診療の専攻医には、サマリーや申し送りなどのベースとなるカルテは、テンプレート形式で共通の記載をしてもらっています。専攻医はローテーションが多いので、申し送りの手間や誤解を減らすためです。ただ、ポイントを押さえて記載すれば、あまり細かく「ああしなさい、こう書きなさい」とは言わないようにしています。

── J-OSLERのサポートはいかがでしょうか

山本医師: 私のところに回ってきた症例や病歴要約などは、チェックや添削しています。指導医~専攻医間の閉じた経験共有だけでなく、全員で共有したり振り返ったりする機会を設けることが出来れば良いなと考えていますが、実施はできていません。

── 山本先生が専攻医の指導で大切にしていることはありますか

山本医師: 私は専攻医の指導だけでなく、初期臨床研修プログラム責任者でもあります。以前は「専攻医、研修医には知識と経験機会を提供したい」。単に、知識と経験の場を提供することだけを考えていました。ところがここ最近、それだけでは思うようにいかないことに気づきました。研修医や専攻医とのコミュニケーションを円滑にし、価値観、性格、将来の展望を知るために、月1回は全研修医&専攻医と30~60分の1対1の面談を設けています。なんでも言ってもらえる空気感をつくるようにしています。

── 1対1の面談をはじめて変化はありましたか

山本医師: はい。面談をはじめてからは、お互いにより理解し合えるようになったと思います。正直なところ、全員何でも自由に言えるわけではありません。言えない後輩もいることでしょう。なので、少なくても私から月1回は「大丈夫?うまくやれそう?」と気にかけていることを伝えています。それだけでも、ずいぶん違うように思います。

── 院内医師の出身大学の傾向や学閥などはいかがでしょうか

山本医師: 地元の岡山県出身の先生が多いですね。その他、出身大学の傾向や学閥の雰囲気などは感じません。

── 全国各地から医師がいらっしゃいますか

山本医師: パッと思いつく限りだと、三重県、山口県、和歌山県、神奈川県といったところでしょうか。関東以北の医師は少ないかもしれませんね。
海外出身の研修医も過去にはいました。彼は中国で医師免許を取得後、日本の大学院を経て日本でも医師免許を取りました。そして当院で初期研修を受け、現在は外部の病院に進んでいます。

── 医師の入局状況はいかがでしょうか

山本医師: 基本的には、誰も入局していません。私自身、一時期は神戸大学で感染症を勉強していましたが、当時も入局していません。現在、当院の中堅医師が大学病院に行って神経内科を勉強中です。この医師も入局はしていません。座学や研究はほぼゼロで、臨床に集中して研鑽を積みました。大学病院当時の関わり方は、プロサッカー選手のレンタル移籍に近い感じでしょうか
古くは、大学病院所属の医師が、派遣として水島協同病院にいらっしゃっていたようです。現在、当院所属のベテラン医師のなかには、派遣でやってきて、そのまま当院に残り続けているケースもあります。しかし現在、そのような入職ルートはなくなっています。

── 院内の雰囲気はいかがでしょうか

山本医師: 当院に限らず、コロナ禍でどこの病院も関係性は変わったように思います。大忘年会みたいな一堂に会する機会はめったにありません。当院は医師の数がさほど多くないこともあって、険悪な雰囲気や喧嘩などは聞きません。
他の特徴として、看護師さん含めたコメディカルの方々がとてもやさしいことでしょうか。研修医、専攻医はすごく大切にしてもらえると思います。

── 水島協同病院の内科、総合診療それぞれの専門研修の特徴を教えてください

山本医師: 専門性をとがらせず、幅広く診察できる環境だと思います。
例えば、神経内科志望の内科専攻医がいたとしましょう。大病院だと神経内科系の疾患に特化して診るかもしれませんが、当院だとそれに加えて、肝硬変など全く他の臓器も診る機会をひんぱんに与えられます。
それに、当院には小児科があるので、総合診療専攻医は、わざわざ院外に行かなくても学べます。もちろん、希望があれば院外で小児科を学ぶこともできます。

内科&総合診療専門研修プログラムの特徴は?手技は多い?

── 水島協同病院の内科、総合診療の専門研修プログラムの違いはどのようになっていますか

山本医師: 一番は、レポートやローテーションの内容が異なることでしょう。それ以外、違いはほとんどありません。総合診療でも1年ほど内科に入りますし、逆に内科専攻医が救急外来を担当するなど、被る部分が多いですね。

── よく診る疾患の傾向はありますか

山本医師: もともと当院がある水島地域は公害もあって、過去には呼吸器系の患者さんが多くいたようです。しかし現在は、その傾向は薄れています。私個人的には、高齢者の方々が疾患を複数抱え、病気が複雑に絡み合っているケースが増えたように感じています。特に救急外来で、その傾向が強まっています。

── 専攻医は何名ほど患者さんを受け持っていますか

山本医師: 時期によって異なりますが、主治医として受け持つのは10~15人となっています。

── 水島協同病院の内科、総合診療の専攻医に向いているのはどんな方だと思いますか

山本医師: 初めて診る疾患、やったことがない手技に楽しみを覚える先生は向いていると思います。私自身もそうなのですが、同じことをくり返すと飽きてしまうタイプです。当院の内科と総合診療科は雑多なことをやらざるを得ないのですが、その分、未知の経験や知識を得る機会がたくさんめぐってきます。そういう研修環境を楽しめる先生は、充実した毎日を送れるのではないでしょうか。

── 専攻医の手技の機会は多いでしょうか

山本医師: 専門的なカテーテル検査、内視鏡手技を経験してもらうことは少なめですが、逆に、髄液検査や腹水穿刺といった研修医が経験するような手技の機会は非常に多くあります。こういった手技も、指導は担当が決まっているわけではなく、指導医みんなで教えています。

── 専攻医の学会参加の頻度や費用のサポートはいかがでしょうか

山本医師: 専攻医によって違いますが、平均して年2回は各領域の学会に参加しています。年4回までは、演題発表がなくても参加出張費は病院が負担します。

── 救急搬入数が2022年から一気に2500台まで増えていますが、その理由はどこにありますか

山本医師: コロナ禍の影響で、2022年に受け入れ数が急増しました。2022年以降も2500件前後の搬入数で推移していて、今後も状況は大きく変わらない見通しです。

救急搬入者数(水島協同病院公式HPより)

当直は月何回?

── 専攻医の当直頻度を教えてください

山本医師: 内科、総合診療ともに週1回ペースで当直に入ります。当直は病棟管理ではなく、救急外来をします。理由があって、当直免除の専攻医もいますが、基本的には週1回お願いしています。

── 土日の当直は月に何回でしょうか

山本医師: 細かく月何回と決めていません。私の体感的には、月1回、土曜日と日曜日いずれの当番が回ってきます。

── 当直は宿直でしょうか

山本医師: はい。宿直です。

── 当直明けの勤務はどのようになっていますか

山本医師: 病院のルールとして、当直明けは半休が与えられます。負担を減らしたいので、「原則昼までには帰ってね」と伝えています。私自身、当直明けは昼までに帰っています。ルールがあっても周知させないと休みにくいと思うので、「みんな、義務として休もうね」と日ごろから話しています。

── 当直では1回あたり何件ほど対応しますか

山本医師: 当院の当直は、救急車の受け入れがメインです。1回の当直で、救急車4~5台を受け入れています。ちなみに私が聞いた限り、当直1回の最大受け入れ台数は13台です。

── 水島協同病院は2次救急病院ですが、当直では脳梗塞や心筋梗塞が多いのでしょうか

山本医師: なんでも来ます。しかし、明らかにICU管理が必要と思われる重症の患者さんは、救命センターに直接運ばれているようです。多い疾患としては、発熱、高齢者施設からの搬送や、二次救急疾患などだと思います。

休日は?病院の周辺環境は?

── 土曜日はお休みでしょうか

山本医師: 土曜日は月1~2回、半日出勤となっています。日祝日が休日の4週6休です。

── 働いている皆さんはマイカーをお持ちでしょうか

山本医師: はい。ほとんどの先生が車をお持ちです。車を持っていた方が、便利な立地です。ただ、通勤は自転車という先生もいるので、車がなくても生活は可能です。

J-OSLER、ポートフォリオの状況は?専門研修修了後の進路は?

── 内科専攻医のJ-OSLERは順調に進んでいるでしょうか

山本医師: 160症例の経験自体は、当院プログラムで集まります。専攻医の話を聞いていると、全てまとめるのに時間がかかっているようですね。

── 総合診療専攻医のポートフォリオの状況はいかがでしょうか

山本医師: 私は総合診療のポートフォリオをつくったことがないので、専門医機構とつながりのある先生や家庭医、総合診療の経験豊富な外部の先生の力を借りています。経験豊富な先生のサポートがあるので、ポートフォリオ自体は順調に進められます。

── 専門研修終了後のみなさんの状況はいかがでしょう

山本医師: 当院の専攻医1期生1名が今年卒業します。内部の関連病院に行きます。もう1名は残るかどうか未定です。特別、強く引き止めることはしませんが、残ってもらえるとうれしいですね。

―― 山本医師、ありがとうございました。

専攻医・シニアレジデント研修時の処遇

募集人員
内科 3名/総合診療 2名
勤務時間(定時)
8:30 ~17:00
当直
2~4回/月
給与
3年目 960万円
4年目 990万円
5年目 1020万円

 

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