Dr.押味の医学英語カフェ

Menu 84: 溶連菌に関する英語表現

こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ。

ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんで頂くコーナーです。

本日のテーマは「溶連菌に関する英語表現」です。

微生物学microbiology や「感染症学infectious diseases でお馴染みの「溶連菌」ですが、これは英語で何と言うのでしょう?

この「溶連菌」は、状況によっては「劇症型溶連菌」や「人食いバクテリア」とも呼ばれますが、これらは英語圏では何と呼ばれているのでしょう?そしてこの細菌は「猩紅熱」や「急性リウマチ熱」なども引き起こしますが、それらの機序や英語表現はどのようなものなのでしょう?

溶連菌」は身近な細菌であると同時に、関連する疾患も重要なものばかりです。しかし日本の医療者で、溶連菌とその関連疾患に関する自然な英語表現を正しく理解している人は決して多くはありません。そこで今月は「溶連菌に関する英語表現」をご紹介したいと思います。

「溶連菌」って英語で何と言う?
一般の方もニュースなどで耳にする「溶連菌」ですが、そもそもこれは何なのでしょう?

細菌bacteria は、その形状から「球菌coccus(複数形は cocci )や「桿菌bacillus(複数形は bacilli )などに分類されます。

このうち球菌は分裂後の配列の仕方によって、さらにいくつかのタイプに分けて表現されます。

2つの球菌が対になったものは「双球菌diplococcus / diplococci と、ブドウの房のように集まっているものは「ブドウ球菌staphylococcus / staphylococci と、そして鎖状に連なっているものは「レンサ球菌streptococcus / streptococci と呼ばれます。

さらにこの streptococcus は、「血液寒天培地blood agar(「ィガー」のように発音)上で培養した際に、周囲の赤血球をどの程度「溶血hemolysis させるかによって3つに分類されます。

赤血球を部分的に溶かし、培地が「緑色」に見えるものは α-hemolyticα溶血性」と呼ばれます。口腔内常在菌として知られる「緑色レンサ球菌viridans streptococciviridans という名称は、blood agar 上でのこの「緑色」に由来しています。

そして赤血球を全く溶かさないものは γ-hemolyticγ溶血性」と表現され、赤血球を完全に溶かしてしまうものは β-hemolyticβ溶血性」と呼ばれます。

よく「溶連菌は溶血性レンサ球菌のことだから、体の中で溶血が起こる」と誤解している方もいますが、この溶血とは blood agar 上で観察される現象であり、体内で赤血球が破壊されることを意味するものではありません

この「β 溶血性」のものは「β 溶血性レンサ球菌」と呼ばれ、菌体表面の抗原性の違いに基づいてさらに細かく分類されます。この分類法は Lancefield 分類と呼ばれ、A 群、B 群、C 群、G 群などが存在します。

日本語で一般に「溶連菌」と呼ばれているものは、この「β 溶血性レンサ球菌」のうち、特に「A 群」に属するもの、すなわち 「A 群レンサ球菌」を指して使われることがほとんどです。

そのため「溶連菌」を単に「溶血性レンサ球菌」と解釈し、それをそのまま英語に直訳して hemolytic streptococcus と表現しても、それは「溶連菌」を正確に表した英語表現にはなりません。

では日本語の「溶連菌」を英語でどのように表現するかというと、「A群レンサ球菌」に相当する Group A streptococcusGroup A strep といった表現が一般的に用いられます。またこの場合の Group は、Lancefield 分類の Group」ですので固有名詞扱いとなり、G は常に大文字になるということにも注意してください。

この Group A streptococcus の略語として GAS という表記も書き言葉ではよく使われますが、これを「ギャス」のように読むことはありません。口頭では「ジー・エー・エス」と読むこともありますが、実際の臨床現場では省略せずに Group A strep と読むことが一般的です。

なお Group A strep の正式な菌名は Streptococcus pyogenes化膿レンサ球菌」です。(この pyogenes は「パイジェニーズ」のように発音します。)ただしこの菌名は医学的な文脈で用いられるため、「溶連菌」や「溶連菌による感染症」を患者さんに説明する際には、Group A strepGroup A streptococcal infection といった表現を用いるのが適切と言えます。

“strep throat” って何のこと?
この Group A strep がなぜ臨床的に重要なのかと言うと、carriage rate保因率」が高い割に、下記の3つの機序で様々な疾患を引き起こすからなのです。

  •  Pyogenic化膿性
  •  Toxigenic毒素産生性
  •  Immunologic免疫的

まずは最初の pyogenic化膿性」の問題から見ていきましょう。

pyogenic とは、細菌が組織に侵入し、化膿性の炎症を引き起こす病態を指します。
溶連菌による pyogenic な感染部位としては、まず throatskin を押さえておくことが重要です。

英語圏では strep throat という表現がよく使われますが、これは「溶連菌による咽頭炎」を意味する streptococcal pharyngitis の一般的な英語表現です。

この strep throat は 5〜15歳 に多くみられ、sore throat without coughing という semantic qualifiers臨床的な意義を与える医学英語」が重要な手がかりとなります。

この strep throat 自体は、通常は重篤な疾患ではありません。しかし放置すると後述する toxigenic や immunologic な疾患につながる可能性があるため、外来診療では rapid strep test と呼ばれる迅速検査が行われます。この検査は正式には rapid antigen detection test (RADT) と呼ばれ、咽頭ぬぐい液から Group A strep の抗原を迅速に検出します。結果が数分で得られるため、その場で治療方針を決定できる点が大きな利点です。

ただしこの rapid strep test は特異度が高いものの感度が十分ではないため、特に小児では、rapid strep test が陰性であっても throat culture咽頭培養」が追加で行われます。

また strep throat は、tonsillitis扁桃炎」や peritonsillar abscess扁桃周囲膿瘍」に進展することもあります。特に peritonsillar abscess では声がこもることがあり、その所見は muffled voiceこもった声」や、hot potato voice口の中に熱いジャガイモを含んだような声」と表現されます。

「とびひ」や「丹毒」の英語表現は?
次に skin での pyogenic化膿性」の問題を見ていきましょう。

皮膚では、感染の深さによって、主に次の 3 つの疾患が起こります。

  •  Impetigo伝染性膿痂疹(のうかしん)
  •  Erysipelas丹毒(たんどく)
  •  Cellulitis蜂窩織炎(ほうかしきえん)

Group A strep が superficial epidermal infection表皮表面への感染」を起こすと、impetigo伝染性膿痂疹」が生じます。

この impetigo(「インピタァイゴ」のように発音)は、ラテン語の impetere「急激に広がる」に由来し、日本語では「とびひ」とも呼ばれます。Staphylococcus aureus黄色ブドウ球菌」による bullous impetigo水疱性膿痂疹」と区別するため、non-bullous impetigo とも呼ばれます。honey-crusted lesions蜂蜜色の痂皮を伴う皮疹」を呈することが特徴です。

Group A strep が superficial dermal infection真皮表層への感染」を起こすと、erysipelas丹毒」が生じます。

この erysipelas(「エリペラス」のように発音)は、ギリシャ語の erythro-(赤い)と pella(皮膚)に由来し、日本語の「丹毒 = 赤い毒」という名称にも対応しています。皮膚表面から見て比較的浅い層での感染であるため、sharply demarcated erythema辺縁が明瞭な紅斑」を呈することが特徴です。

Group A strep が deep dermal and subcutaneous infection真皮深層および皮下組織への感染」を起こすと、cellulitis蜂窩織炎」が生じます。

この cellulitis(「セルユイティス」のように発音)は、ラテン語の cellula(小さな細胞)に由来し、日本語では「蜂の巣のような構造をもつ組織の炎症」という意味から「蜂窩織炎」と呼ばれます。皮膚表面から見て深部で進行する感染であるため、poorly demarcated erythema辺縁が不明瞭な紅斑」となることが特徴です。

「劇症型溶連菌」や「人食いバクテリア」の英語表現は?
次に toxigenic毒素産生性」の問題を見ていきましょう。

Group A strep が産生する毒素によって、主に下記の3つの疾患が起こります。

  •  Scarlet fever猩紅(しょうこう)熱
  •  Streptococcal toxic shock syndrome (STSS)劇症型溶血性レンサ球菌感染症
  •  Necrotizing fasciitis壊死性筋膜炎

小児が strep throat を発症した後、Group A strep が産生する毒素が全身に作用すると、fever発熱」に加えて、strawberry tongueイチゴ舌」や sandpaper-like rash紙やすりのような手触りの発疹」を呈する scarlet fever に進展することがあります。

このscarlet feverでは、咽頭感染そのものに加えて streptococcal pyrogenic exotoxin が全身症状の原因となる点が特徴です。ここでみられる特徴的な紅色の発疹が、想像上の猿のような動物である「猩々(しょうじょう)」の赤い顔を想起させることから、日本語では「猩紅熱」と呼ばれています。

scarlet fever が比較的予後のよい toxigenic な疾患である一方で、より重篤な病態も存在します。その代表例が streptococcal toxic shock syndrome (STSS)necrotizing fasciitis です。

streptococcal toxic shock syndrome (STSS) は、streptococcal pyrogenic exotoxin がsuperantigen として作用することで、全身性の強い炎症反応が引き起こされる病態です。高熱に加え、急激な血圧低下多臓器不全を呈し、短時間で重篤化することが特徴です。

日本ではこの病態は「劇症型溶血性レンサ球菌感染症」と呼ばれますが、これをそのまま fulminant hemolytic streptococcal infection のように直訳しても、英語圏では自然でも標準的でもありません。英語圏では streptococcal toxic shock syndrome (STSS) という名称がそのまま用いられていますので、注意してください。

necrotizing fasciitis壊死性筋膜炎」とは、筋膜に沿って感染が急速に進展し、streptococcal pyrogenic exotoxinの関与によって広範な組織壊死を引き起こす、極めて重篤な病態です。この necrotizing fasciitis は STSS を合併することも多く、両者は invasive Group A streptococcal infections という一連の連続した病態スペクトラムとして理解されることがあります。

日本ではこうした「急速に進行し、致死率の高い A群レンサ球菌感染症」を指して、「劇症型溶連菌」という表現が用いられていますが、この日本語表現に近い英語表現として、invasive Group A streptococcal infectioninvasive strep A といったものが用いられます。

また日本では壊死性筋膜炎が「人食いバクテリア」と表現されることがありますが、英語圏でも報道などで flesh-eating bacteria という言い回しが使われることがあります。

覚えておきたい急性リウマチ熱の “J❤️NES” とは?
では最後に immunologic免疫的」な問題を見ていきましょう。

Group A strep が引き起こす免疫反応によって、主に下記の2つの疾患が起こります。

  •  Acute rheumatic fever急性リウマチ熱
  •  Post-streptococcal glomerulonephritis (PSGN)溶連菌感染後糸球体腎炎

acute rheumatic fever急性リウマチ熱」は、Group A strep 感染後に生じるtype II hypersensitivity による合併症です。その特徴的な症状の mnemonics記憶法」として、古くからJ❤️NES(JONESと読みます)が有名です。

J: Joint (migratory polyarthritis)
❤️: Pancarditis (endocarditis + myocarditis + pericarditis)
N: Nodules in skin
E: Erythema marginatum
S: Sydenham chorea

J = Joint
関節炎として特徴的なのは migratory polyarthritis遊走性多発関節炎」です。これはある関節の炎症が改善すると、別の関節に炎症が移っていくという関節炎です。

❤️ = Carditis
急性リウマチ熱で最も重要なのが carditis心炎」で、endocarditis心内膜炎」+ myocarditis心筋炎」+ pericarditis心外膜炎」と、心臓の全ての層が侵されうる pancarditis汎心炎」となります。

N = Nodules
ここでの nodules とは、皮下に触れる subcutaneous nodules皮下結節」を指します。頻度は高くありませんがリウマチ熱を強く示唆する所見です。

E = Erythema marginatum
体幹を中心にみられる erythema marginatum環状紅斑」は serpiginous rash蛇行状発疹」と形容され、痒みを伴わないのが特徴です。「鬼滅の刃」の「蛇の呼吸」の英語は Serpent Breathing です。この serpent は「」や「蛇の」という意味ですが、serpiginous は「蛇のようにうねうねとしている = 蛇行している」という意味の表現です。

S = Sydenham chorea
Sydenham choreaシデナム舞踏病」は、中枢神経系が免疫学的に障害されることで生じる chorea舞踏症」で、感染から数週間から数ヶ月後に出現します。この Sydenham は、英語では本来 「ドゥナム」 のように発音されます。ただし人名に由来する語であるため、実際の英語圏の口語や講演では 「デナム」や「イデナム」 など、やや異なる発音が用いられている場面に出会うこともあります。

中世ヨーロッパでは、Sydenham chorea のような、踊るような不随意運動を医学的な病気として理解できず、宗教的な現象として捉えていました。こうした奇妙な動きは St. Vitus という聖人に祈ることで治ると信じられたため、これらの症状は St. Vitus’ dance と呼ばれました。そしてこの名称は Sydenham chorea の歴史的な別名として使われるようにもなったのです。また不随意運動の chorea の原因としては acute rheumatic fever の他、Huntington diseaseハンチントン舞踏病」も重要です。そして Huntington disease による chorea は進行性で重症なため chorea major と呼ばれます。これに対して Sydenham chorea は比較的軽症な chorea ということで、chorea minor とも呼ばれます。

post-streptococcal glomerulonephritis (PSGN)溶連菌感染後糸球体腎炎」は、溶連菌感染後に形成された免疫複合体が腎糸球体に沈着して起こる type III hypersensitivity による合併症です。

この PSGN でみられる腎障害のパターンは、nephritic syndrome腎炎症候群」と呼ばれます。

nephritic syndrome では、免疫複合体が糸球体基底膜の内皮側、すなわち subendothelial deposits内皮下沈着」として存在します。この位置は血流側に近く、補体や炎症細胞と直接接触しやすいため、補体活性化を介した強い炎症反応が引き起こされます。その結果、糸球体のフィルター構造には数は少ないものの大きな破綻が生じ、hematuria血尿」と mild proteinuria軽度な蛋白尿」という症状が現れます。

つまり nephritic syndrome は、「赤血球が漏れ出るほどの大きな破綻が生じる一方で、蛋白が大量に漏れ出るほどではない病態」とイメージしておくとよいでしょう。

これに対して nephrotic syndromeネフローゼ症候群」では、免疫複合体などの障害は糸球体基底膜の外側、すなわち subepithelial deposits上皮下沈着」として起こります。この位置では免疫複合体は血流から隔てられているため、補体や炎症細胞が直接関与しにくく、炎症反応は比較的弱く抑えられます。その一方で、糸球体の濾過バリア機能そのものが広範に障害されます。その結果、糸球体のフィルターには小さな破綻が多数生じる状態となり、heavy proteinuria高度な蛋白尿」という症状が現れます。

つまり nephrotic syndrome は、「赤血球が漏れ出るほどの大きな破綻は起こりにくいものの、小さな破綻が多数生じるため蛋白が大量に漏れ出る病態」とイメージしておくとよいでしょう。

このように Group A strep は、pyogenic, toxigenic, and immunologic という3つの機序で様々な疾患を引き起こします。ですから臨床的に極めて重要な細菌なのです。

さてそろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に溶連菌が引き起こす代表的な疾患をもう一度まとめておきましょう。

Pyogenic「化膿性」
Throat

  •  Streptococcal pharyngitis: “strep throat”
  •  Tonsillitis
  •  Peritonsillar abscess: muffled voice & hot potato voice
Skin
  •  (Non-bullous) impetigo: honey-crusted lesions
  •  Erysipelas: sharply demarcated erythema
  •  Cellulitis: poorly demarcated erythema

Toxigenic「毒素産生性」

  •  Scarlet fever: fever + strawberry tongue + sandpaper-like rash
  •  Invasive strep A
    • o Streptococcal toxic shock syndrome (STSS)
    • o Necrotizing fasciitis

Immunologic「免疫的」

  •  Acute rheumatic fever: J❤️NES
  •  Post-streptococcal glomerulonephritis (PSGN): hematuria + mild proteinuria

ではまたのご来店をお待ちしております。

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国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 教授 
押味 貴之

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