こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ。
ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんで頂くコーナーです。
本日のテーマは「紅斑に関する英語表現」です。
「皮疹」skin rash の中でも「紅斑」erythema は、日常診療でも頻出の所見です。しかしこの erythema には、erythema migrans、erythema nodosum、erythema infectiosum、erythema multiforme、erythema marginatum など、よく似た名称のものが数多く存在します。またそれぞれの紅斑は特定の疾患と深く関連しているのですが、「これはどの疾患で見られる紅斑だったっけ?」と迷った経験のある方も多いのではないでしょうか。
そこで今月は「紅斑に関する英語表現」をテーマに、その特徴と表記を整理してみたいと思います。
blanching skin rashって何?
「紅斑」は英語で erythema(「エリセマ」のように発音)と言い、「血管拡張」vasodilation によって生じます。この erythema とよく対比されるのが「紫斑」purpura(「パーピュラ」のように発音)で、こちらは「血管外漏出」extravasation によって生じます。
この2つを区別するために行うのが、皮疹をガラスなどの透明な物体で圧迫する方法です。圧迫したときに皮疹が blanch「白くなる・退色する」かどうかを確認します。
erythema は血管拡張によるため圧迫で退色し、blanching skin rash と呼ばれます。一方、purpura は血液が血管外に漏出しているため圧迫しても色が変わらず、non-blanching skin rash と表現されます。
このように皮疹を圧迫して評価する方法は「硝子圧診」と呼ばれ、英語では diascopy と言います。dia- は through を意味しますので、この diascopy とは「透かして観察すること」という意味になります。そしてこの diascopy は、ガラスやタンブラーを用いることから glass test や tumbler test とも呼ばれます。
皮膚病変の表記方法は?
では具体的な erythema の種類をご紹介する前に、skin lesion「皮膚病変」を臨床的にどのように表記するかを確認しておきましょう。皮膚病変の診断では、それぞれの病変を「正確に表記できること」が出発点になります。そしてその表記には下記の6つの要素が重要になります。(詳しく知りたい方は Stanford Medicine のこちらのサイトをご覧ください。)これらが基本的な “the language of dermatology” となります。
Primary Morphology「一次病変」
- • Macule「斑」Flat lesion less than 1 cm, without elevation or depression
- • Patch「局面」Flat lesion greater than 1 cm, without elevation or depression
- • Plaque「局面・扁平隆起性病変」Flat, elevated lesion, greater than 1 cm
- • Papule「丘疹」Elevated, solid lesion less than 1 cm
- • Nodule「結節」Elevated, solid lesion greater than 1 cm
- • Pustule「膿疱」Elevated, pus-filled lesion
- • Vesicle「水疱」Elevated, fluid-filled lesion less than 1 cm
- • Bulla「大水疱」Elevated, fluid-filled lesion greater than 1 cm
- • Wheal「膨疹」Transient elevated and edematous lesion
Size「大きさ」
Demarcation「境界」
- • Well demarcated
- • Poorly demarcated
Color「色調」
Secondary Morphology「二次病変」
Distribution「分布」
このうち最も重要な要素が、primary morphology「一次病変」です。
この primary morphology は primary skin lesions とも呼ばれ、その皮疹の本質を最もよく反映する基本的な形態のことを指します。
平坦で触れない 1 cm 未満の病変は macule、1 cmより大きければ patch と呼びます。一方で盛り上がって触れる 1 cm 未満の病変は papule、1 cm より大きくなると nodule、そして広く平坦に隆起した 1 cm以上のものは plaque と表現されます。内容物を持つ病変としては、液体を含む vesicle や bulla、膿を含む pustule などがあります。そして浮腫によって一過性に隆起する病変は wheal と呼ばれます。
このように一次病変はそれぞれ明確に分類されますが、臨床の現場ではこれらが単独で存在するとは限りません。実際には複数の形態が混在して認められることも多く、その代表的な表現が maculopapular rash「斑丘疹性発疹」です。
これは、1 cm 未満の平坦な macule「斑」と、触知可能な papule「丘疹」が混在している状態を指す表現です。視覚的には「赤い平坦な部分の中に小さな盛り上がりが散在している」ように見えます。ウイルス感染症や薬疹などでよく見られ、USMLEなどでも非常に頻繁に用いられる表現です。
次に size「大きさ」です。ここでは単に「大きい」「小さい」と言うのではなく、具体的な数値で示すことが望まれます。
demarcation「境界」も重要な情報です。境界が明瞭な場合は well demarcated、不明瞭な場合は poorly demarcated と表現します。
color「色調」については、white、purple、brown、yellow、black、blue などの具体的な色調で表現しますが、赤い場合には erythematous という形容詞がよく使われます。
secondary morphology (secondary skin lesions)「二次病変」とは、一次病変の経過や外的要因によって生じた変化を指します。たとえば、鱗屑を伴う scaling は表皮のターンオーバーの亢進を示し、crust は滲出液が乾燥した状態を表します。また掻破による excoriation や erosion は、痒みという症状とそれに対する患者の行動を反映しています。つまり secondary morphology とは、「皮膚に現れた一次病変の時間経過の記録」とも言えるものです。
最後の要素が distribution「分布」です。皮疹がどこにどのように広がっているかは、診断に大きなヒントを与えます。たとえば、全身に広がる generalized な紅斑は薬疹を示唆し、日光暴露部に限局する photodistributive な分布は光線関連疾患を想起させます。また、肘や膝などの extensor surface に分布する皮疹は、乾癬などを想起させます。
皮膚病変を記述する際には、必ずこの6つの要素を使って記述するように意識してみましょう。そうすることで病変の情報が「診断に直結する情報」へと変わります。
Bull’s-eye rash とは?
それではここから具体的な erythema の種類を見ていきましょう。
まずは Lyme disease の初期病変として有名な erythema migrans「遊走性紅斑」です。
Lyme disease は、deer tick と呼ばれるマダニに咬まれることで、Borrelia burgdorferi という spirochete「スピロヘータ」に感染して生じます。migrans は「移動しながら広がる」という意味ですが、病変そのものが皮膚を移動しているわけではありません。実際には、紅斑の中心部は次第に消退しながら周囲へと拡大していきます。その結果、あたかも病変が移動しているかのように見えるのです。
この erythema migrans を説明する際によく使われる表現が、bull’s-eye rash です。これは「的(まと)」のように、中心が抜けて周囲が赤く広がる皮疹を意味し、central clearing を伴う annular erythema「環状紅斑」を指します。
この erythema migrans の skin lesion を先ほどの6つの要素に加え、診断につながる臨床的な意味づけを持つ semantic qualifiers を用いて表現すると、下記のようになります。
The patient presents with a well-demarcated, erythematous annular patch measuring approximately 5 cm in diameter with central clearing, located on the medial aspect of the right calf at the site of a tick bite.
このように表現することで、この skin lesion が Lyme disease による erythema migrans であることを、聴き手・読み手に効果的に伝えることができます。
では次に erythema nodosum「結節性紅斑」を見ていきましょう。
これは皮膚の浅いところではなく、皮下脂肪組織に炎症が生じることで起こる紅斑です。病変が皮膚の深い層に存在するため、境界は不明瞭で poorly demarcated な所見となります。臨床的には painful/tender erythematous nodules on the anterior shins として表現されることが一般的です。
この erythema nodosum は特定の疾患に限らず、さまざまな全身疾患に関連して出現します。代表的なものとしては、sarcoidosis「サルコイドーシス」、group A streptococcal infection「A群溶連菌感染」、tuberculosis「結核」、inflammatory bowel disease (IBD)「炎症性腸疾患」、そして oral contraceptive pills (OCPs)「経口避妊薬」などが挙げられます。
そしてこの erythema nodosum を記述する場合、先ほどの6つの要素に加えて診断につながる臨床的な意味づけを持つ semantic qualifiers を用いて表現すると、典型例は下記のようになります。
The patient presents with multiple, poorly demarcated, tender erythematous nodules measuring 2 to 4 cm in diameter, distributed on the anterior aspects of the shins.
「リンゴ病」の英語表現は?
次に erythema multiforme「多形紅斑」を見ていきましょう。
この multiforme は「多様な形態をとる」という意味であり、この紅斑が単一ではなく多彩な形態を示すことを表しています。臨床的に特に重要なのが、target lesion「標的病変」 と呼ばれる、「的(まと)」の形を模した特徴的な病変です。中心から外側に向かって同心円状に色調が変化するこの形態は、erythema multiformeに特有の所見です。
多くの場合、herpes simplex virus (HSV)「単純ヘルペスウイルス」感染の後に出現し、self-limited「自然軽快する」経過をとります。
そしてこの erythema multiforme を semantic qualifiers を用いて記述する場合、典型例は下記のようになります。
The patient presents with well-demarcated, erythematous papules and plaques measuring 1 to 3 cm in diameter with target-shaped morphology, distributed on the extensor surfaces of the extremities.
続いては erythema infectiosum「伝染性紅斑」です。
これは頬に出現する鮮やかな紅斑で、あたかも平手で叩かれたように見えることから、英語では slapped-cheek rash と表現されます。原因は parvovirus B19 による感染で、軽い発熱や倦怠感などの後に、ウイルス血症が消退した時期にこの特徴的な頬の紅斑が出現します。さらに数日後には、体幹や四肢に maculopapular rash「斑丘疹性発疹」が広がり、次第に lacy「網目状」あるいは reticular「網状」へと変化します。手掌や足底は通常侵されず、日光や熱によって増悪することがあります。
そしてこの erythema infectiosum は皮膚病変である「紅斑」としてだけでなく、「疾患名」としても使われています。特徴的な頬の所見から日本では「リンゴ病」と呼ばれていますが、英語圏では fifth disease と呼ばれています。
この呼び名は19世紀に小児の発疹性疾患を番号で整理した経緯によるもので、1番目から6番目の疾患は下記のように対応しています。
- • First disease: Measles/Rubeola「麻疹」
- • Second disease: Scarlet fever「猩紅熱」
- • Third disease: Rubella「風疹」
- • Fourth disease: Dukes disease「現在は独立した疾患としては否定されている概念」
- • Fifth disease: Erythema infectiosum「伝染性紅斑」
- • Sixth disease: Roseola infantum「突発性発疹」
このうち、現在でも名称として使われているのは、fifth disease と sixth disease の2つのみです。
そしてこの erythema infectiosum を semantic qualifiers を用いて記述する場合、典型例は下記のようになります。
The patient presents with well-demarcated, bright erythematous patches on both cheeks, followed by a nonpruritic maculopapular rash on the trunk and extremities that later develops a lacy pattern.
最後にご紹介する erythema が erythema marginatum「輪状紅斑」です。
これは「Menu 84: 溶連菌に関する英語表現」でご紹介したように、rheumatic fever「リウマチ熱」に特徴的な紅斑です。serpiginous rash「蛇行状発疹」と形容され、痒みを伴わないのが特徴です。serpent は「蛇の」という意味ですが、そこから派生した serpiginous は「蛇のようにうねうねとしている = 蛇行している」という意味の表現です。
そしてこの erythema marginatum を semantic qualifiers を用いて記述する場合、典型例は下記のようになります。
The patient presents with well-demarcated, erythematous serpiginous patches of variable size with central clearing, distributed on the trunk and proximal extremities.
今回ご紹介したように、それぞれの erythema は特徴的な形態を持ち、特定の疾患と密接に関連しています。
そしてこれらを “the language of dermatology” である6つの要素に加え、診断を示唆する semantic qualifiers を意識して表現することで、特定の疾患を想起することが可能になるのです。
さてそろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に今回ご紹介した erythema の種類とその特徴的な semantic qualifiers、そして関連疾患をまとめておきます。
- • Erythema migrans: annular lesion with central clearing/bull’s-eye rash → Lyme disease
- • Erythema nodosum: tender nodules on the shins → systemic conditions (sarcoidosis, GAS, TB, IBD, OCPs)
- • Erythema multiforme: target lesions → post-HSV infection
- • Erythema infectiosum: slapped-cheek rash → parvovirus B19 infection/fifth disease
- • Erythema marginatum: serpiginous rash → rheumatic fever
ではまたのご来店をお待ちしております。
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国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 教授
押味 貴之


