Dr.押味の医学英語カフェ

Menu 92: 精神科での医療通訳

こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ。

ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんで頂くコーナーです。

本日のテーマは「精神科での医療通訳」です。

このコラムの読者には英語医療通訳者の方も多いと思いますが、「精神科」psychiatry での医療通訳を特に難しいと感じている方が多いことと思います。精神科の診察を通訳する際には、「この病名は英語で何と言えばいいのだろう?」「患者さんの話が長くなってきたけれど、少し整理して訳してもいいのかな?」のように迷ったことがある通訳者の方も多いと思います。

Menu 32「医療通訳者と上手く協働する方法」では、医療者の立場から、医療通訳者と協働する際に気をつけたいことをご紹介しました。今月は主に英語医療通訳者の皆さんに向けて「精神科での医療通訳」において大切なことをご紹介したいと思います。

なぜ精神科での医療通訳は難しいの?
よく「精神科での医療通訳は難しい」と言われますが、それはなぜなのでしょう?ここではその理由を4つに分けて整理してみましょう。

Words & Concepts: What should I say?
1つ目は「どの言葉で伝えればよいのか?」という、言葉と概念の問題です。

精神科には、一般によく知られた呼び名と現在の正式な診断名が異なる疾患があります。また、日本語の「自律神経失調症」のように、英語にそのまま対応する名称がないものもあります。そのため、言葉が何を意味するのかを正しく理解した上で、どの表現を選ぶかに迷うことがあるのです。

Accuracy & Interaction: How much should I interpret?
2つ目は「どこまで通訳すればよいのか?」という、正確さと対話の問題です。

患者さんが長く話したり、同じことを繰り返したりすると、少し整理して訳したくなるかもしれません。しかし精神科では、話の内容に加え、ためらいや言い直し、話題の移り方も診察の手がかりになります。そのため、内容を正確に伝えるだけでなく、話し方の特徴をどこまで残すかに迷うことがあるのです。

Role & Boundaries: When should I step in?
3つ目は「いつ対話に入ればよいのか?」という、通訳者の役割と境界の問題です。

意味が分からないときや、医療者と患者さんの理解が食い違っていると感じたときには、確認が必要になります。一方、患者さんのためを思っていても、通訳者が代わりに判断したり、治療について助言したりするわけにはいきません。そのため、自分の役割を踏まえながら、いつ、どのように対話へ介入するかに迷うことがあるのです。

Patient & Interpreter: How do I handle difficult encounters?
4つ目は「難しい場面にどう対応すればよいのか?」という、患者さんと通訳者自身の関係の問題です。

患者さんの怒りや深い悲しみ、自殺に関する発言に接すると、通訳者も戸惑ったり、気持ちが揺れたりすることがあります。そのため、患者さんの感情を含めて正確に伝えながら、自分自身の心理的な負担にどう対処するかに迷うことがあるのです。

このように精神科での医療通訳には、「言葉を選ぶ難しさ」「話し方を伝える難しさ」「介入を判断する難しさ」「心理的な負担に対処する難しさ」があるのです。

精神科疾患の通称名と現在の正式名称
では最初に「言葉を選ぶ難しさ」に注目して、精神科疾患の名称を確認していきましょう。

精神科の疾患名を理解する際に役立つのが、DSM-5-TR です。これは Diagnostic and Statistical Manual of Mental Disorders, Fifth Edition, Text Revision の略で、日本語では『精神疾患の診断・統計マニュアル 第5版・本文改訂版』と呼ばれます。米国精神医学会が2022年に刊行した、精神疾患の診断・分類のためのマニュアルです。

DSM-5-TR では、精神疾患が次の 20 Disorder Chapters に整理されています。「精神科」と聞くとうつ病や統合失調症のような疾患のみと考える方も多いと思いますが、実際には睡眠、摂食、認知機能など、扱う領域は幅広いのです。

英語 日本語
Neurodevelopmental Disorders 神経発達症群
Schizophrenia Spectrum and Other Psychotic Disorders 統合失調スペクトラム症及び他の精神症群
Bipolar and Related Disorders 双極症及び関連症群
Depressive Disorders 抑うつ症群
Anxiety Disorders 不安症群
Obsessive-Compulsive and Related Disorders 強迫症及び関連症群
Trauma- and Stressor-Related Disorders 心的外傷及びストレス因関連症群
Dissociative Disorders 解離症群
Somatic Symptom and Related Disorders 身体症状症及び関連症群
Feeding and Eating Disorders 食行動症及び摂食症群
Elimination Disorders 排泄症群
Sleep-Wake Disorders 睡眠・覚醒障害群
Sexual Dysfunctions 性機能不全群
Gender Dysphoria 性別違和
Disruptive, Impulse-Control, and Conduct Disorders 秩序破壊的・衝動制御・素行症群
Substance-Related and Addictive Disorders 物質関連症及び嗜癖症群
Neurocognitive Disorders 神経認知障害群
Personality Disorders パーソナリティ症群
Paraphilic Disorders パラフィリア症群
Other Mental Disorders and Additional Codes 他の精神疾患群と追加コード

ただ診断マニュアルの名称が変わっても、患者さんが使う言葉まで一斉に変わるわけではありません。実際の診察では従来の診断名や、日常的な呼び名を耳にすることもあります。ここでは、通訳の際に知っておきたい8つの例をご紹介しましょう。

Manic Depression「躁うつ病」
以前は manic depression「躁うつ病」と呼ばれていた疾患は、現在では bipolar I disorder「双極症 Ⅰ 型」や bipolar II disorder「双極症 Ⅱ 型」として扱われています。もちろん患者さんが manic depression と話しただけでは、Ⅰ型かⅡ型かまでは分かりませんので、通訳者が補って訳さないようにしましょう。

Multiple Personality「多重人格」
multiple personality や split personality は一般によく知られた呼び名ですが、現在の診断名は dissociative identity disorder (DID)「解離性同一症」となっています。ただ日常会話で使われた split personality が必ずしもこの診断を指しているわけではなく、単に態度が大きく変わる人を指すこともあるので気をつけてください。

Asperger’s Syndrome「アスペルガー症候群」
Asperger’s syndrome は、現在の DSM-5-TR では autism spectrum disorder (ASD)「自閉スペクトラム症」に含めて扱われます。以前この診断を受けた患者さんがご自身について Asperger’s syndrome と表現することはありますが、その発言を通訳者が自分の判断で別の名称に直す必要はありません。

Gender Identity Disorder「性同一性障害」
以前の診断名である gender identity disorder (GID) に対し、DSM-5-TR では gender dysphoria「性別違和」という名称が使われています。dysphoria は「不快感」や「苦痛」を意味し、euphoria「多幸感」と対になる表現です。この名称変更では性自認そのものではなく、出生時に割り当てられた性と性自認との不一致に関連する苦痛や生活上の支障に焦点が移されています。ただ患者さんが「自分の性別に違和感がある」と話したからといって、それを診断名の gender dysphoria に置き換えてはいけませんのでご注意を。

Neurosis「神経症・ノイローゼ」
neurosis は、現在の DSM-5-TR における単一の診断名ではありません。以前この言葉で説明されていた状態には、不安症、強迫症、心的外傷に関連する症状、身体症状症など、さまざまなものが含まれます。ですから単純に「神経症なら anxiety disorder と訳せばよい」というわけでもないのです。

Hysteria「ヒステリー」
hysteria も現在の DSM-5-TR における単一の診断名ではありません。歴史的にこの名称で扱われていた状態には、functional neurological symptom disorder「機能性神経症状症」や conversion disorder「解離症」などに相当します。日常会話では感情的な言動について使われることもあるため、医学的な意味で使われているかどうかを確認する必要があります。また形容詞の hysterical には「感情を抑えられない」の他、「笑いが抑えられないほど面白い」という意味もあるので注意してください。

Hypochondriasis「心気症」
以前の hypochondriasis に関連する状態は、現在では illness anxiety disorder「病気不安症」や somatic symptom disorder「身体症状症」として扱われています。単に英語の名前が変わったのではなく、診断の分け方自体が変わっているため、旧称を一つの現在の診断名へ機械的に置き換えないことが大切です。

Alcoholism「アルコール依存症」
従来よく使われてきた alcoholism に関連する現在の診断名は alcohol use disorder (AUD)「アルコール使用障害」です。この名称は依存だけでなく、アルコール使用によって生じる問題を幅広く捉えるものです。そのため alcoholism と alcohol use disorder の範囲が完全に同じとは限りません。

日本語の「自律神経失調症」も、医療通訳者が迷いやすい表現です。dysautonomia や autonomic dysfunction という訳語が使われる場合もありますが、日本語の「自律神経失調症」の意味と完全に一致するわけではありません。

dysautonomia は自律神経系の障害を指し、autonomic dysfunction は自律神経の機能異常を述べる表現です。また autonomic failure は自律神経の機能不全を指しますが、日本語の「自律神経失調症」の訳として安易に使うものではありません。

日本では「自律神経失調症」という名称が、さまざまな身体的・心理的症状について使われます。DSM-5-TR に一対一で対応する診断名はなく、somatic symptom disorder「身体症状症」と同じものでもありません。

ですから「自律神経失調症と診断された」という話なのか、患者さんがご自身の症状をそう表現しているのか、また医療者がどのような状態を指しているのかを確認することが大切です。

対応する単語を探すだけでなく、その言葉で何を伝えようとしているのかを確かめる。これが精神科での医療通訳における「言葉と概念」に関する注意点なのです。

「良い医療通訳」を考えるために役に立つ Pöchhacker の4層モデルとは?

疾患名を正しく理解することは大切ですが、適切な単語を選べば、それだけで「良い医療通訳」になるわけではありません。では「良い医療通訳」とはどのようなものなのでしょうか?ここでは Menu 32 でもご紹介した通訳研究者 Pöchhacker の4層モデルを確認してみましょう。

Pöchhacker は「良い通訳」として、まずは「原文に忠実で正確な通訳」があり、その上位に「聞きやすい通訳」と「意図が反映された通訳」が位置し、最上位に「対話が成立している通訳」が存在すると説明しています。ではそれぞれを精神科の場面に当てはめて考えてみましょう。

Accurate Rendition「原文に忠実で正確な通訳」
土台となるのが、話された内容を正確に伝えることです。「足さない・引かない・変えない」という通訳の基本が、ここに当たります。精神科では、患者さんの言葉だけでなく、言い直しや繰り返しなど、臨床的に意味のある話し方の特徴も保つことが大切になります。

Adequate Target-Language Expression「聞きやすい通訳」
次に、訳した言葉が聞き手に理解できる表現になっているかを考えます。英語の語順や単語をそのまま日本語に置き換えても、意味が伝わるとは限りません。正確で理解しやすい表現を選ぶ必要があります。ただし、患者さんのまとまりのない話まで、通訳者が筋道の通った話に整えるという意味ではありません。

Equivalent Intended Effect「意図が反映された通訳」
3つ目は、話し手の意図やニュアンスが、聞き手にも伝わっているかという視点です。たとえば、患者さんが不安そうに “Are you sure I’ll be okay?” と尋ねたなら、その不安も伝える必要があります。疑問文として正しく訳せていても、単なる確認のように聞こえてしまえば、話し手の意図が十分に伝わったとは言えません。

Successful Communicative Interaction「対話が成立している通訳」
最上位にあるのが、医療者と患者さんの対話が成立しているかという視点です。言葉を正確に訳していても、双方が異なる意味で理解していたり、同時に話して聞き取れなかったりすれば、対話はうまく進みません。必要に応じて発言を区切ってもらい、分からないことを確認するのも、医療通訳者の大切な役割です。その際には、通訳者自身の確認であることを双方に明らかにします。

このように「良い医療通訳」では、「どう伝えるか」だけでなく、「どう伝わったか」まで考える必要があります。ただし、対話を成立させようとして、患者さんの話し方や思考の流れを変えてしまってはいけません。

では次に、精神科で話し方や思考の流れが重要になる理由を、Mental Status Examination (MSE) から見ていきましょう。

Mental Status Examination (MSE) では何を評価しているの?
Mental Status Examination (MSE)「精神状態診察」では、患者さんが何を話したかに加え、どのように話したかにも注目します。

MSE では、外見や行動、感情の表出に加え、発話、気分、思考、知覚、認知機能、病識、判断力、安全性などから、その時点での精神状態を評価します。言葉を通して確認する項目も多いため、医療者と患者さんの言語が異なる場合には、通訳の仕方が評価に影響します。そして医療通訳の際に特に意識したいのが、Speech と Thought Process です。

Speech「発話・話し方」
Speech では、話す速さや声の大きさ、発話量、返答までの間、ためらいなどに注目します。たとえば患者さんが、次のように話したとしましょう。

“Well… um… I haven’t really been sleeping… I mean, I sleep, but not much… maybe two hours?”

これを「睡眠は2時間くらいです」とまとめてしまえば、睡眠時間の情報は伝わります。しかし、「ええと……あまり眠れていなくて……。いや、眠ってはいるんですが……2時間くらいかな」と訳した場合に比べ、ためらいや言い直しが失われます。こうした話し方も診察の手がかりになるのです。

Thought Process「思考の流れ」
Thought Process では、患者さんの考えがどうつながり、話題がどのように移るかに注目します。たとえば、

“I haven’t been sleeping much. Sleep is important. My mother always said that. She was a nurse…”

と、不眠から睡眠の大切さ、母親、その職業へと話が移った場合、「最近眠れていません」とまとめてしまうと、思考の流れが伝わりません。話題の順序やつながりを保ち、長い発言は早めに区切って通訳することが大切です。

このように精神科では、「何を話したか」と「どのように話したか」の両方が重要になります。「聞きやすい通訳」を目指しながら、患者さんの話し方や思考の流れまで変えないように注意しましょう。

注意したい「自殺」に関する英語表現
MSE で確認する安全性に関わる言葉として、特に注意したいのが「自殺」に関する表現です。ただし「死にたいと思うこと」と「具体的な計画を立てて実行しようとすること」では、意味が異なります。ここでは Columbia-Suicide Severity Rating Scale (C-SSRS)という自殺念慮や自殺関連行動を評価する尺度を参考に、考え・方法・意図・計画の違いを確認してみましょう。

Wish to Be Dead「死への願望」

“I wish I wouldn’t wake up.”「このまま目が覚めなければいいのに」のように、死を望む気持ちを表します。

Suicidal Thoughts「自殺についての考え」

“I’ve been thinking about killing myself.”「自殺することを考えています」のように、自分で命を絶つことを考えている状態です。この段階では、方法や計画、実行する意図を伴わない自殺についての考えを扱います。

Suicidal Thoughts with Method「方法を伴う自殺念慮」

“I’ve thought about taking an overdose, but I don’t intend to do it.”「薬を大量に飲むことを考えましたが、実行するつもりはありません」のように、方法を考えているものの、具体的な計画や実行する意図はない状態です。方法を考えていることと、実行する意図があることは同じではありません。

Suicidal Intent「自殺の意図」

“I intend to kill myself, but I haven’t worked out how or when.”「自殺するつもりですが、方法や時期はまだ決めていません」のように、実行する意図があるものの、具体的な計画はない状態です。具体的な計画がなくても、実行する意図があることは重要な情報になります。

Suicidal Intent with Specific Plan「具体的な計画を伴う自殺の意図」

“I have a specific plan, and I intend to carry it out.”「具体的な計画があり、実行するつもりです」のように、計画と実行する意図の両方がある状態です。方法だけでなく、時期や準備についての発言も省略せずに伝えることが重要です。

さらに考えや意図とは別に preparatory behavior「準備行動」や suicide attempt「自殺未遂」という行動に関する表現もあります。ただし、“I took a lot of pills.”「薬を大量に飲みました」という発言だけを、通訳者が「自殺未遂」と言い換えてはいけません。何をしたかという「行動」と、死ぬためにしたのかという「意図」を区別する必要があるからです。

そしてこれらは必ずしもこの順序で進むわけではありません。通訳では、患者さんの発言を一括して「自殺願望」としてまとめず、何を考え、どのような方法や計画があり、実行する意図があると話したのかを保って伝えましょう。医療者の直接的な質問も、通訳者の判断で婉曲にしないことが大切です。

また「全てを終わりにしたいと思うことはありますか?」のような、婉曲的な質問が使われた場合にも注意が必要です。この場合は “Do you ever feel like you want to end it all?” のようにできるだけ忠実に通訳しましょう。ただし英語の end it all も自殺をほのめかす表現として受け取られることがあり、日本語と全く同じ曖昧さが保たれるとは限りません。何を「終わりにしたい」のかが不明な場合には、通訳者が “kill yourself” と勝手に意味を限定するのではなく、質問した医療者に意図を確認し、患者さんにも具体的に尋ねてもらうことが大切になります。

精神科の医療通訳に関する Q&A
ここまで、精神科での通訳に必要な言葉と考え方をご紹介しました。では、実際の場面で迷いやすいことを、Q&A で確認してみましょう。

患者さんが早口で長く話し続けたら?
話し終わるまで待ってから要約するのではなく、早めに区切って通訳しましょう。“Could you pause for a moment so I can interpret?”「通訳するために、少しお待ち頂けますか?」と声をかけます。話し方や思考の流れを保つためにも、通訳できる長さで区切ることが大切です。

患者さんと医師が同時に話し始めたら?
どちらかの発言を優先して、もう一方を省略しないようにします。 “Could we speak one at a time so I can interpret everything accurately?”「すべて正確に通訳するために、一人ずつお話し頂けますか?」と、対話を整理しましょう。これは、先ほどの4層モデルで紹介した「対話が成立している通訳」を支えるための介入でもあります。

待合室で患者さんと話してもいいの?
挨拶や一般的な会話は構いません。ただし、通訳者が独自に症状を詳しく聞き取ったり、治療について助言したりする「事前診察」にならないようにしましょう。患者さんから診療に関わる話が出た場合には、診察中に医療者へ伝えられるようにつなぎます。親しみやすく接することと、医療者に代わって診察することは別です。

支援制度について知っていたら、患者さんに教えてもいいの?
医療制度に詳しいことは、通訳者の強みになります。しかし、知っているからといって、通訳中に独自の説明を加えてよいわけではありません。必要と思われる情報があれば、まず医療者に確認し、誰が説明するかを明確にしましょう。通訳者としての発言と、医療者の説明を訳した発言が混ざらないことが重要です。

検査の質問が難しそうなら、簡単に言い換えてもいいの?
MSE とは別に、認知機能や抑うつ症状などを評価する検査・尺度を通訳する場合があります。その際に、質問を簡単に言い換えたり、答えのヒントを加えたりすると、評価の条件が変わってしまう可能性があります。分からない用語は、“Could you clarify what you mean by this term?”「この用語の意味を説明して頂けますか?」と医療者に確認し、検査の実施方法に従って通訳してくださいね。

患者さんの怒りや悲しみを受け止め続けるのがつらいときは?
患者さんの強い感情を、自分への個人的な攻撃として受け止めすぎないことが大切です。感情も診察に必要な情報として伝えながら、負担が大きいときには休憩や同僚への相談を考えましょう。守秘義務に配慮しつつ、通訳者自身が無理なく役割を果たせるようにすることも必要です。

患者さんの話から病名が分かった気がしたら?
精神科の知識を学ぶことは、発言を理解する助けになります。ただし、通訳者が診断名を付け加えたり、その診断を前提に訳したりしてはいけません。患者さんの言葉と話し方を正確に伝え、医学的な判断は医療者に委ねましょう。よく理解することと、自分で診断することを区別する姿勢が大切なのです。

さて、そろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に精神科での医療通訳で気をつけておきたいポイントを、最初にご紹介した4つの問いに沿ってまとめておきます。

What should I say?「言葉の意味を確かめる」
通称や旧称と現在の診断名の関係を理解し、患者さんが使った言葉を勝手に別の診断名へ置き換えないようにしましょう。

How much should I interpret?「内容も話し方も伝える」
MSE では、「何を話したか」に加えて「どのように話したか」も重要です。話を整えすぎず、自殺に関する発言も、考え・方法・計画・意図・行動の違いを保って伝えましょう。

When should I step in?「対話を支えるために介入する」
長い発言は区切ってもらい、分からないことは双方に分かる形で確認します。診断や治療の判断を代行せず、「対話が成立している通訳」を目指しましょう。

How do I handle difficult encounters?「患者さんと自分を守る」
患者さんの感情を正確に伝え、安心して話せる場を守ります。同時に、自分自身の心理的な負担にも気を配り、必要なときには休憩や相談をしてくださいね。

この「意味を確かめる」「話し方も伝える」「対話を支える」「患者さんと自分を守る」という4つを、精神科での医療通訳の際に思い出して頂ければと思います。

では、またのご来店をお待ちしております。

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国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 教授 
押味 貴之

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