Dr.押味の医学英語カフェ

Menu 87: 皮疹に関する英語表現

こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ。

ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんで頂くコーナーです。

本日のテーマは「皮疹に関する英語表現」です。

医学教育モデル・コア・カリキュラムで設定されている症状の中でも、「皮疹rash を苦手としている医学生は少なくありません。その理由はいくつかありますが、その一つとして「似たような表現が多い」ことが挙げられます。

そこで今月は、よく似た英語表現を中心に、皆さんが苦手としやすい「皮疹に関する英語表現」をご紹介いたします。

Rash と Eruption はどう違うの?
皮疹」は英語では rash と言います。これは「皮膚の反応」というイメージの表現で、可算名詞として扱われます。

ですから患者が皮疹を主訴として受診した場合には、“This is a 24-year-old woman presenting with a 3-day history of a diffuse pruritic maculopapular rash.” や “This is a 7-year-old boy presenting with a 2-day history of a vesicular rash involving the trunk and extremities.” のように、a rash という表現を使います。

そして皮疹が複数回起こる場合や、様々な種類の皮疹となる場合には、“The medication may cause various rashes.” や “Children commonly develop rashes.” のように複数形として使われます。

皮疹」として skin rash という表現もよく使われますが、この rash 自体に「皮疹」という意味があるので、skin rash という表現は「皮膚の発疹」のような、やや冗長的な印象を与えます。しかし曖昧さを回避するためか、この skin rash という表現は一般的にもよく使われています。

この rash とよく混同されるものとして skin lesion皮膚病変」がありますが、これは「正常ではない皮膚所見」のことであり、通常は医療者同士で使われる表現です。ですから “The rash consists of multiple skin lesions.” のように使い分けると覚えておくと良いでしょう。そしてこの lesion も可算名詞として扱われます。

Skin lesion と同様に、rash と混同されるものとして eruption発疹」があります。volcanic eruption が「火山の噴火」を意味するように、この eruption には「噴き出ること」というイメージがあります。そのため dermatology皮膚科」領域では、「皮疹が噴き出すように出現すること」という意味で、この eruption という用語が使われるのです。つまり rash が比較的一般的で日常的な表現であるのに対し、eruption はより医学的な表現として使われる傾向があるのです。

薬の副作用として皮疹が出現することを「薬疹」と言いますが、これは薬を飲むことで皮疹が出現すること」という意味を含むため、英語では drug rash よりも、drug eruption という表現が最もよく使われます。そしてこの eruption も rash と同様に可算名詞として扱われます。

以上をまとめると下記の通りになります。まずはこの3つの違いをしっかりと押さえておきましょう。

  •  Rash皮疹」(皮膚の反応)
  •  Skin lesion皮膚病変」(正常ではない皮膚所見)
  •  Eruption発疹」(皮疹が噴き出すように出現すること)

視診で気をつける “Arrangement” とは?
Menu 85 でも詳しく説明しましたが、rash の診断では inspection視診」において「皮膚病変」である skin lesions を下記の項目に沿って表記することが出発点となります。

Primary Morphology「一次病変」

  •  Macule「斑」Flat lesion less than 1 cm, without elevation or depression
  •  Patch「局面」Flat lesion greater than 1 cm, without elevation or depression
  •  Plaque「局面・扁平隆起性病変」Flat, elevated lesion, greater than 1 cm
  •  Papule「丘疹」Elevated, solid lesion less than 1 cm
  •  Nodule「結節」Elevated, solid lesion greater than 1 cm
  •  Pustule「膿疱」Elevated, pus-filled lesion
  •  Vesicle「水疱」Elevated, fluid-filled lesion less than 1 cm
  •  Bulla「大水疱」Elevated, fluid-filled lesion greater than 1 cm
  •  Wheal「膨疹」Transient elevated and edematous lesion

Size「大きさ」
Demarcation「境界」

  •  Well demarcated
  •  Poorly demarcated

Color「色調」
Secondary Morphology「二次病変」
Distribution「分布」

OSCE などの実技試験では、まず history taking を行ってから physical examination に進むことが推奨されています。しかし実際の皮膚科診療では、詳細な病歴聴取の前にまず skin lesions を inspection視診」で観察すること、もしくは inspection と並行して history taking が行われることが一般的です。そしてその際には、上記の6項目を使って詳細に skin lesions を記述するのではなく、下記の4項目を意識することが重要になります。

  • 1. Distribution
  • 2. Arrangement
  • 3. Primary lesions / Primary morphology
  • 4. Secondary lesions / Secondary changes

まずは distribution皮疹がどこに分布しているか」を確認していきます。

たとえば psoriasis乾癬かんせん)」では elbows や knees の extensor surfaces伸側」に病変が多く見られますし、atopic dermatitis / eczemaアトピー性皮膚炎」では flexural areas屈側」に分布することが典型的です。そして generalized distribution全身性分布」は、drug eruption薬疹」を示唆する重要な所見でもあります。

そのため distribution に関しては、“Where did the rash first appear?” のような質問が重要になります。

次に重要なのが arrangement です。これは「個々の皮膚病変がどのように配列しているか」を意味します。

たとえば linear arrangement線状配列」であれば allergic contact dermatitisアレルギー性接触皮膚炎」を、grouped arrangement集簇性しゅうぞくせい配列」であれば herpes simplex単純ヘルペス」などを考えます。また dermatomal arrangement皮節性配列」であれば herpes zoster / shingles帯状疱疹」が重要な鑑別になります。

そのため arrangement に関しては、“Did the lesions appear in a line or in clusters?” のような質問が重要になります。

そして inspection において最も重要とも言えるのが、primary lesions / primary morphology一次病変」です。

例えば psoriasis乾癬」 では papules and plaques が典型的ですし、varicella水痘」では vesicles が主体になります。また urticaria蕁麻疹」では、強い pruritus掻痒そうよう)」を伴う wheal が主体となります。

そのため primary lesions を確認する際には、“Did the rash start as flat spots or raised bumps?” の他にも、 “Does it itch?” という質問も重要になります。

最後に重要なのが secondary lesions / secondary changes二次病変・二次変化」です。

これは primary lesions に対する scratching掻破そうは)」や chronic inflammation慢性炎症」などの二次的な反応によって生じる変化です。たとえば scale鱗屑りんせつ)」は excessive keratin を反映していますし、crust痂皮かひ)」は dried exudate を意味します。また excoriation掻破痕そうはこん)」は acute scratching によって生じ、lichenification苔癬化たいせんか)」は chronic scratching による皮膚肥厚を意味します。

そのため secondary lesions を確認する際には、“Have you been scratching the area frequently?” のような質問が重要になります。

このように rash の診察においては、

  • 1. Distribution
  • 2. Arrangement
  • 3. Primary lesions / Primary morphology
  • 4. Secondary lesions / Secondary changes

の4項目を意識しながら、inspection と history taking を進めていくことが効果的と言えます。

「蕁麻疹が出た」の自然な英語表現は?
ではここから頻度が高い皮疹である「蕁麻疹じんましん)」に関する英語表現を見ていきましょう。

蕁麻疹」の医学英語は urticaria で、発音は「アーティァリア」のようになります。

そしてこの urticaria は、医学的には transient, pruritic, superficial wheal-and-flare reaction一過性で掻痒性を伴う表在性の膨疹反応」として説明されます。

この urticaria の一種として、dermographism皮膚描記症ひふびょうきしょう)」があります。これは physical urticaria物理性蕁麻疹」の一種であり、皮膚を軽く掻いたり圧迫したりすると、その刺激に沿って線状の wheal「膨疹」が出現する病態です。まるで皮膚に文字を書けるように見えることから、skin writing とも呼ばれます。

この urticaria とよく混同されるものとして、angioedema血管性浮腫」があります。そしてこちらは transient, non-pruritic, deep swelling一過性で、掻痒をあまり伴わない深部の腫脹」と説明することができます。この wheal-and-flare という表現は、皮疹中央に現れる wheal「膨疹」とその周囲の flare「発赤」を意味するもので、USMLE の問題でも頻出の表現です。

そのため angioedema では、lips, eyelids, や tongue などに urticaria よりも強い腫脹を認めます。また urticaria と異なり、pruritus掻痒が目立たないことも特徴です。

この urticaria は医学用語であり、日常会話では一般的に hives と表現されます。

蕁麻疹が出た」と表現する場合には、“I got hives.” や “I developed hives.” のような表現がよく使われます。ただ「蕁麻疹が急に現れて広がった」というニュアンスを込めて「蕁麻疹が出た」と表現する際には、“I broke out in hives.” のように break out in という表現が頻用されます。患者さんとの会話ではよく使われる表現ですので、知らなかった方は是非覚えておいてくださいね。

Abrasion と Laceration はどう違うの?
皮膚科領域では日本語にも英語にも難解な表現が数多くあります。この「医学英語カフェ」では、これまでにも3回に分けて様々な皮膚に関する英語表現を紹介していますので、下記を未読の方は是非ご覧ください。

Menu 10: 皮膚に関する英語表現
Menu 84: 溶連菌に関する英語表現
Menu 85: 紅斑に関する英語表現

今回は最後に、日本の医学生や医師が混同しやすい皮膚に関する英語表現を比較しながらご紹介したいと思います。

まずは下記を見て、それぞれの違いがわかるか考えてみてください。

  •  Wheal vs Papule
  •  Scale vs Crust
  •  Scab vs Eschar
  •  Excoriation vs Lichenification
  •  Abrasion vs Laceration
  •  Induration vs Edema
  •  Erosion vs Ulcer
  •  Fissure vs Fistula
  •  Petechiae vs Purpura vs Ecchymosis

いかがでしたか?

では一つずつ見ていきましょう。

まずは wheal膨疹」と papule丘疹」です。

先ほど urticaria = transient, pruritic, superficial wheal-and-flare reaction とご紹介したように、whealtransient swelling と表現されます。

これに対して papulepersistent solid elevation です。炎症細胞浸潤や組織増殖によって形成されるため、wheal のように短時間で消えることはありません。

次に scale鱗屑りんせつ)」と crust痂皮かひ)」の違いを見ていきましょう。

scale は excessive keratin による keratin flaking角質の剥離」です。乾燥した角質がぽろぽろ落ちる状態であり、psoriasis乾癬」や atopic dermatitis / eczemaアトピー性皮膚炎」などでよく見られます。

一方で crustdried fluid乾燥した滲出液」です。serum, blood, pus などが乾燥して形成されたものであり、 “honey-colored crust” と言えば、impetigo伝染性膿痂疹・とびひ」を意味します。

そしてこの crust と関連して覚えておきたいのが、scabかさぶた」と eschar黒色壊死組織」です。

scabhealing blood clot治癒過程の血餅」のことです。ですから「かさぶたを触らないで!」と言いたい場合には、“Don’t pick at your scab!” のように表現します。

これに対して eschardead tissue壊死組織」のことです。scrub typhusツツガムシ病」では fever, erythema, eschar, and severe headache の組み合わせが重要な pattern recognition として知られています。

掻痒性疾患で頻出なのが excoriation掻破痕そうはこん)」と lichenification苔癬化たいせんか)」です。

excoriationsuperficial scratch marks from acute scratching急性の掻破による表在性の引っかき傷」であるのに対し、lichenificationthickened skin with accentuated lines from chronic scratching慢性的な掻破による皮膚肥厚と皮溝の強調」となります。つまり excoriation は「痒くて掻いた傷」であるのに対し、lichenification は「ずっと掻いていて厚くなった皮膚」のことなのです。

外傷では abrasion擦過傷さっかしょう)」と laceration裂創れっそう)」の区別も重要です。

こちらの区別は単純で、abrasionsuperficial friction injury表在性の摩擦損傷」であるのに対し、lacerationdeep tear injury深い裂傷」を意味します。

続いて induration硬結」と edema浮腫」の違いを見ていきましょう。

indurationhard swelling硬い腫脹」です。炎症や線維化によって生じるため、触診では firm弾力があって硬い」あるいは hard弾力がなくて硬い」と表現されます。cellulitis蜂窩織炎」や inflammatory breast cancer炎症性乳癌」などで重要な所見です。

これに対して edemasoft swelling柔らかい腫脹」です。体液貯留によって生じるため、boggyぶよぶよした」あるいは pitting圧迫するとへこむ」と形容されることがあります。

erosionびらん」と ulcer潰瘍」の違いで重要なのは depth深さ」です。

erosionloss of the epidermis表皮のみの欠損」です。そのため heals without scarring瘢痕を残さずに治癒する」ことが可能です。

これに対して ulcerloss of the epidermis and dermis or deeper真皮以上の深部に及ぶ欠損」です。そのため heals with scarring瘢痕を残して治癒する」ことになります。

また綴りが似ている fissure亀裂」 と fistula瘻孔ろうこう)」 の違いも重要です。

fissure は「亀裂 = 裂け目」ですが、fistula瘻孔」は tract connecting two surfaces二つの表面を交通する異常な管」を意味します。そのため anal fistula痔瘻」や enterocutaneous fistula腸管皮膚瘻」などで使われます。

最後に重要なのが、出血斑に関する3つの表現です。出血斑は non-blanching圧迫しても退色しない」という特徴があり、「紅斑」である erythema との違いになります。

petechiae点状出血」は small non-blanching hemorrhages (<2 mm)2 mm 未満の小出血斑」です。

purpura紫斑」は medium-sized non-blanching hemorrhages (2–10 mm)中等大の出血斑」です。

そして ecchymosis斑状出血」は large non-blanching hemorrhages (>10 mm)大型の出血斑」です。

さてそろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に今回ご紹介したよく似た皮膚に関する英語表現をもう一度まとめておきます。

  •  Rash皮疹」(皮膚の反応)
  •  Skin lesion皮膚病変」(正常ではない皮膚所見)
  •  Eruption発疹」(皮疹が噴き出すように出現すること)
  •  Urticaria/Hives蕁麻疹」= transient, pruritic, superficial wheal-and-flare reaction
  •  Angioedema血管性浮腫」= transient, non-pruritic, deep swelling
  •  Wheal膨疹」= transient swelling
  •  Papule丘疹」= persistent solid elevation
  •  Scale鱗屑りんせつ)」= keratin flaking
  •  Crust痂皮かひ)」= dried exudate
  •  Scabかさぶた」= healing blood clot
  •  Eschar黒色壊死組織」= necrotic tissue
  •  Excoriation掻破痕(そうはこん)」= superficial scratch marks from acute scratching
  •  Lichenification苔癬化(たいせんか)」= thickened skin with accentuated lines from chronic scratching
  •  Abrasion擦過傷(さっかしょう)」= superficial friction injury
  •  Laceration裂創(れっそう)」= deep tear injury
  •  Induration硬結」= hard swelling
  •  Edema浮腫」= soft swelling
  •  Erosionびらん」= loss of the epidermis without scarring
  •  Ulcer潰瘍」= loss of the epidermis and dermis or deeper with scarring
  •  Fissure亀裂」= superficial linear crack
  •  Fistula瘻孔(ろうこう)」= tract connecting two surfaces
  •  Petechiae点状出血」= small non-blanching hemorrhages (<2 mm)
  •  Purpura紫斑」= medium-sized non-blanching hemorrhages (2–10 mm)
  •  Ecchymosis斑状出血」= large non-blanching hemorrhages (>10 mm)

ではまたのご来店をお待ちしております。

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国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 教授 
押味 貴之

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