こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ!
ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんでいただくコーナーです。
本日のテーマは「英語の志望動機書で役に立つ形容詞」。
医師や医学生が海外に留学をする際には「履歴書」 resumeや「業績書」 curriculum vitae (CV) と並んで、「志望動機書」 personal statements/application letterや「推薦状」 recommendation letter などが必要になります。私も医学生さんから「英語で personal statements を書いたので見てもらえませんか?」という要望をよく頂くのですが、そのなかで応募者が自分のことを serious や aggressive と形容していて驚くことがあります。おそらく「自分は真面目で積極的である」と言いたいのでしょうが、これらは実際には全く違う印象を与えてしまいます。
そこで今日は英語の志望動機書や推薦状で高く評価される英語の形容詞をご紹介します。
日本人が大切にする美徳の一つとして「真面目さ」がありますが、「自分は真面目です」と表現したい際に、最もよい印象を与える形容詞が diligent です。同じような意味の形容詞として hard-working がありますが、これには文字通り「一生懸命に仕事をこなす」というイメージがあります。これに対して diligent には「責任感をもって最後まで勤勉にやり遂げる」というイメージがあります。ここで気をつけて頂きたいのが serious という形容詞です。これには「物事を深刻に捉える」というイメージがあるので、人を表現する際に用いると「この人は物事を深刻に捉える面倒くさい人」というようなネガティブな印象を与えてしまいます。ですから推薦状などでは不用意に使わないように気をつけましょう。
では「自分は積極的です」と表現したい際は、どのような形容詞を使えばよいでしょう?もし「様々な事柄に自分から行動を起こす」という意味で使いたいのでしたら active、「自分の責任として物事を受け止める」という意味なら proactiveのように表現するとよいでしょう。「積極的」と聞いて aggressive を思い浮かべる方も多いと思いますが、これは「相手の状況に関係なく自分から行動を起こす」というイメージの表現で、使う状況によっては「攻撃的な性格の人」という印象を与えてしまいますので、志望動機書などでは使わないようにしましょう。
次に「自分は他人とうまくやっていけます」 と表現したい場合、どんな表現を使いますか?これにも色々な形容詞がありますが、「他人の感情を汲み取ることができる」というイメージでしたら compassionate や considerate という形容詞がおすすめです。前者は「他人の感情 passion を共有できる」というイメージが、後者には「他人に気配りする consider ことができる」というイメージがあります。この他にも 「他人に共感できる」empathetic、「様々な考え方を受け入れる」open-minded や 「チームプレーヤーである」a good team player などもとてもよい印象を与える表現ですので、合わせて覚えておきましょう。
「物事を前向きに考える」と表現したい場合には、簡単に positive を使いましょう。日本語では「コップに水が半分も入っている」や「コップに水が半分しか入っていない」という表現がありますが、英語でも同じように glass-half-full と glass-half-empty という形容詞があります。また英語には“Every cloud has a silver lining.” という表現があるのですが、これは「どんな雲を見上げても、その周りには太陽が照らすことによって生まれる銀色の光が見える」ということわざで、「物事を前向きに考える人は、どんな悪い状況でも希望の光を見出すように、どんな悪い状況でも物事を前向きに考えよう」という意味で使われます。そこからsilver-lining は「どんな悪い状況でも前向きに考える」を表す形容詞として使われています。
「自分は謙虚です」と自分でアピールすることは滅多にありませんが、推薦状ではよく使われます。その際には humble よりも modest や unassuming といった形容詞をおすすめします。humble は「他人よりも自分を低く見る」という内面に焦点が当たっているのに対し、 unassuming や modest は「簡単に達成できると見立てない」「他人に能力を見せびらかせない」という行動に焦点が当たっている表現です。もちろん humble であることも評価される場合もあると思いますが、個人的には英語圏では unassuming やmodest の表現の方が評価されると思います。
「柔軟な」にも色々な表現がありますが、adaptableとflexibleはどちらもとても印象がよい形容詞です。これらは「新しい環境や人間関係に柔軟に対応できる」というイメージで、推薦状などでこのように表現されるととてもよい印象を与えます。
英語圏では「人の意見を鵜呑みにせずに、まずは自分の意見を言う」ということが高く評価されます。したがって「自分の頭で考える」「前例に囚われずに創意工夫をする」という inventive/innovative/creative といった形容詞も高く評価されます。これらは日本の病院によっては、「勝手なことをして組織のルールに従わない」というようにネガティブに捉えられてしまうかもしれませんが、英語圏ではその応募者が「様々な事柄に興味をもち」curious、「勇気をもつ」 brave ことの証にもなるので、英語の志望動機書や推薦状では安心して使ってください。
さて、そろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に今日の重要表現をもう一度おさらいしておきましょう。
真面目な: diligent/hard-working
積極的な: active/proactive
思いやりのある: compassionate/considerate
他人に共感できる: empathetic
様々な考え方を受け入れる: open-minded
前向きな: positive/glass-half-full/silver-lining
謙虚な: modest/unassuming
柔軟な: adaptable/flexible
創意工夫ができる: inventive/innovative/creative
では、またのご来店をお待ちしております。
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国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 教授 押味 貴之