こんにちは。「医学英語カフェ」にようこそ。
ここは「コーヒー1杯分」の時間で、医学英語にまつわる話を気軽に楽しんで頂くコーナーです。
本日のテーマは「ChatGPT を使った医学英語の学び方」です。
ChatGPT に代表される生成AIの普及により、英語学修は大きく変わりました。それに伴い、「医師としてのコミュニケーションを英語で行うことができる能力」である医学英語の学修方法も大きく様変わりしています。数多くの便利な使い方が可能になった一方、そういった使い方を知らずに従来の勉強方法を続けている医師や医学生も数多くいると思います。
そこで今月は、2026年1月現在において、私自身が推奨できる基礎的な「ChatGPT を使った医学英語の学び方」をご紹介いたします。
ChatGPT を使った医療面接の学び方
ChatGPT の活用が、最も効力を発揮するのが「英語での医療面接」の学修です。
欧米の医学部では、既に生成AI を模擬患者として使用するのが一般化しています。日本ではまだまだこのような使用法は一般化していませんが、「英語圏の模擬患者役」として、ChatGPT は絶大なる力を発揮してくれます。
英語での医療面接では、下記の項目に関して質問するのが一般的です。
- • Patient’s ID
- • Chief Complaint
- • History of Present Illness
- • Past Medical History
- • Past Surgical History
- • Medications
- • Allergies
- • Family History
- • Social History
- • Review of Systems
この英語での医療面接を練習するに当たって、まずは ChatGPT にこちらの prompt を copy & paste(コピペ)します。次に prompt にある Chief Complaint に模擬患者に演じてもらいたい「主訴」を、そして Diagnosis に模擬患者に演じてもらいたい「疾患名」をそれぞれ入力します。
この prompt を使うことで、ChatGPT は自動的に下記の項目を実施してくれます。
- • 指定された「主訴」と「疾患名」に基づいた模擬患者として演じる
- • 英語圏の模擬患者として自然で口語的な英語表現を使う
- • 各質問項目で最低1つの陽性項目を述べる
- • 面接後に、学習者が理解できていなかった 英語表現を説明する
- • 提示された評価基準に沿って学習者の医療面接を採点する
- • 提示された評価基準に沿って具体的な改善点を指摘する
この prompt では12分間の full history taking を想定していますが、目的に応じて時間を調整しても問題ありません。また基本的な質問表現が身についていない方は、まずはこちらにある質問表現を参照しながら練習するといいでしょう。
ChatGPT を使うことでかなり実践に近い感覚で練習することが可能になりますが、それでも「本物」の医療面接に勝る教材はありません。
そこで役に立つのが YouTube の “GPs: Behind the Closed Doors” という channel です。ここでは英国の general practitioner (GP) と本物の patient の会話を視聴することができます。こういった「本物」の医療面接を聴いて理解できることが大切なのですが、動画を視聴するだけで何を話しているかを正しく理解することは困難です。
しかしこの channel には Transcript という機能があり、Show transcript をクリックすると画面の右側に話している内容がテキストで表示されます。これを全て選択して ChatGPT の prompt にコピペしましょう。そしてその後にこちらの prompt をコピペしてください。この prompt を使うことで、ChatGPT は自動的に下記の項目を実施してくれます。
- • 動画の会話を「医療者」と「患者」に分けてテキスト化する
- • 汎用性の高い口語英語表現を取り上げて解説する
- • 動画の内容に関して OET Listening Sub-Test Part A & B の問題を作成し、その解答も解説する
いかがですか?今回ご紹介する2つの prompts を使うだけで、英語での医療面接を従来の学修方法よりもかなり効率的に練習できるということがお分かり頂けると思います。是非皆さんもこの2つの prompts を使って実践的な医療面接の練習に挑戦してみてください。
ChatGPT を使った症例報告とカルテ記載の学び方
次に ChatGPT 効力を発揮するのが「英語での症例報告(プレゼンテーション)」の学修です。
この学修に関しては、まずは「良い手本」となる症例報告に慣れる必要があります。「Menu 79: 英語での症例プレゼンテーション:応用編」でご紹介したように、症例報告(プレゼンテーション)はその目的に応じて異なる様式があります。下記の様式をそれぞれクリックすると、それぞれの様式で「良い手本」となる症例報告の原稿を作成してくれます。
- • Full Case Presentation での症例報告作成のための prompt
- • SNAPPS での症例報告作成のための prompt
- • I-PASSでの症例報告作成のための prompt
- • SBAR での症例報告作成のための prompt
また先ほど提示した「英語での医療面接」を ChatGPT を使って練習した後に、その内容を使って症例報告の原稿を作成してもらうことも可能です。
ChatGPT を使って英語での医療面接を行った後に、その内容を症例報告にするための prompts
そして症例報告は聴いて理解できるということが大切です。ChatGPT の音声モードを使い、こちらの A という prompt を使えば、読み上げるスピードや発音・アクセントを調整した上で、作成した症例報告を読み上げてもらうことが可能です。またこちらの B という prompt を使えば、読み上げてもらった症例報告の内容を確認する問題を作成することが可能です。
「英語でのカルテ記載」も「症例報告」と同様の prompts を使えるのですが、カルテ記載の場合には Full Patient Note の様式で略語なども使って書くのが一般的ですので、手本を作成する場合にはこちらの、そして英語での医療面接を終えた後にその内容をカルテ記載する場合にはこちらの prompt を使うといいでしょう。
そして自分が作成した症例報告やカルテ記載を評価してもらう際にも ChatGPT は役に立ちます。
自分が作成した「英語での症例報告(プレゼンテーション)」を評価してもらい、改善のためのフィードバックを得るためにはこちらの prompt をお使いください。
そして自分が作成した「英語でのカルテ記載」を評価してもらい、改善のためのフィードバックを得るためにはこちらの prompt をお使いください。
医学英語のスキルとしては、英語での「医療面接」「症例報告」「カルテ記載」の3つが最重要のスキルです。皆さんもここでご紹介した prompts を使って、これら3つのスキルの学修を進めてみてください。
ChatGPT を使った各種試験対策
では最後に各種の医学英語関連試験の対策に、ChatGPT をどのように使えば良いかを見ていきましょう。
まずは「医師国家試験の英語関連問題」の対策です。
模擬試験を受けるように、過去問を参照してサンプル問題を作成し、その解説をしてもらいたい場合にはこちらのような prompt が有効です。どのような分野のサンプル問題を作成してもらいたいか、どの程度の難易度を希望するかを入力して、サンプル問題を作成してもらいましょう。
「USMLE にはどんな問題が出ているのだろう?」と疑問に思っている方にも ChatGPT は役に立ちます。 USMLE Step 1 や Step 2 Clinical Knowledge (CK) のサンプル問題をこちらのような prompt を使って作成してもらうことも可能です。
同様の方法で TOEFL ITP や OET の Listening & Reading Sub-Test のサンプル問題を作成してもらうことも可能です。
ただこういったサンプル問題の質は決して高くなく、本物の問題と比べて質がかなり劣るということはしっかりと理解しておきましょう。
ただ OET の Writing & Speaking 対策には基準に沿ったフィードバックが必要になるので、ChatGPT は極めて有用と言えます。
Writing Sub-Test 用にはこちらを、そして Speaking Sub-Test 用にはこちらの prompt をお使いください。
サンプル問題作成に関しては、やはり本物の問題と比べて質がかなり劣りますが、成果物の評価に関しては、評価者が人ではない分だけ信頼性が高まるとも言えます。
このように使いようによっては、さまざまな医学英語関連の試験対策に ChatGPT を利用することも可能なのです。
さてそろそろカップのコーヒーも残りわずかです。最後に今回ご紹介した prompts 以外で、簡単で役に立つ prompt をいくつかご紹介しておきます。
- • 医学用語の語源と発音を確認する prompt
Please explain the etymology, meaning, and clear pronunciation (IPA and stress) of the following medical term: (term). - • 医学用語の正しい用法を確認する prompt
Please explain the correct clinical usage and pronunciation (IPA and stress) of the following medical term: (term). - • 患者に尋ねる際に、どのような質問表現を使えば良いかを確認する prompt
Please give natural clinical English expressions to ask a patient the following question: (your question). - • 患者に説明する際に、どのように説明すれば良いかを確認する prompt
Please explain the following medical concept in clear, patient-friendly English: (concept).
ではまたのご来店をお待ちしております。
「Dr. 押味の医学英語カフェ」では、読者の皆さまがこの連載で取り上げてほしい医学英語のトピックを募集しています。こちらのリンクよりご希望のトピックを自由に記載してお送りください。
国際医療福祉大学医学部 医学教育統括センター 教授
押味 貴之


