

【 塩口 滉一郎(しおぐち こういちろう) 医師 】
26歳 研修医1年目
出身地:東京都
出身大学:東京医科大学医学部
所属:北見赤十字病院
希望進路:消化器内科
趣味:ランニング、映画鑑賞、一人旅、御朱印集め
徒歩10分で通勤!東京の通勤ラッシュとは無縁で快適
病院見学は何年生のころ? マッチングの状況はどうだった?
── 北海道で初期研修を受けようと思った理由を教えてください
塩口医師:
私は東京生まれ、東京育ち。大学も東京です。そのことから、当時は自然と関東圏の病院で初期研修を考えました。
病院見学も、まずは関東圏中心に開始。都内のマッチング上位の人気病院から、さほど有名ではない病院まで、いくつも見学しました。しかし、自分としてはどれもピンと来ず、どうしようか悩んでいました。
── 見学時、関東の病院の印象はいかがだったのでしょうか
塩口医師: 私が見学した病院が偶然、そうだっただけかもしれませんが、医学生へのアピールとして、「東京駅まで〇〇分」「東京まで車で〇〇分」などを大々的にうたっていました。私とは違う見え方をする医学生もいるでしょうが、私には立地が魅力的に映りませんでした。
── 北海道の病院を検討したきっかけを教えてください
塩口医師:
北海道で初期研修を受けようと思ったのは6年生と遅め。きっかけは、ポリクリにて一緒の班になったリーダーとの会話でした。初期研修先を迷っていることを打ち明けたところ、リーダーから「私は沖縄で初期研修を受けたよ。思い切って、北海道とか沖縄に行ってみればどう」と言われました。それに、「初期研修の2年間は北海道から沖縄まで、全国どこでも好きなところで暮らせる切符。都内とは違う気候、文化、食事を堪能しながら学べるよ」ともアドバイスされたのです。
その言葉が胸に残り、「都内の医学生が行かない病院で、冒険的な気持ちで学びたい」。そんな気持ちになりました。
── 北海道内の病院を見学しはじめた時期を教えてください
塩口医師:
6年生5月のことです。試しに北海道のなかでもアクセスしやすい札幌の病院を見学。自分に北海道が合っていると確信を得られ、本格的に北海道で検討を開始しました。その後、道内の2病院を見学。さらに、レジナビなどの合同説明会にも参加しました。
都内医学部の友人は、私よりたくさんの病院を見学していたので、もうちょっと頑張ってみようと思い、9月に北見赤十字病院にたどりつきました。
── 北見赤十字病院での見学。印象はいかがでしたか
塩口医師:
見学前、北見赤十字病院のホームページを確認しました。マッチング登録ギリギリの9月まで、病院見学とセットで試験を受けられるとありました。正直、見学前は「北見ってどこだっけ?」。その程度の印象でした。
あまり期待せず見学したところ、病棟は非常にきれいですし、科も揃っていて充実していました。それに、先生方の雰囲気や教育体制もしっかりしていて、「すごくいいな!」と好印象でした

── 見学に際して、病院などから補助はありましたか
塩口医師: はい、北見赤十字病院から補助をもらえました。宿泊は病院が全額負担。見学に加えて試験を受ければ、さらに4万円の交通費補助がもらえました。
── 当日、試験を受けたのですね
塩口医師: はい。見学前に履歴書を提出し、病院見学と同じ日に試験も受けました。
── 2024年度の初期研修マッチングで北見赤十字病院はフルマッチと人気。塩口先生のときはいかがでしたか
塩口医師: 北見赤十字病院はほぼ毎年フルマッチしています。僕の代はたまたまフルマッチしていませんが、2025年入職の一つ下の代もフルマッチしたようです。
── やはり北見赤十字病院は人気ですね。中間発表で北見赤十字病院の状況はいかがでしたか
塩口医師: 北見赤十字病院は、例年、中間発表時に8、9人が第1希望を出します。しかし私の代は、なぜか中間発表で第1希望登録者が3人と極端に少なかったのです。当初、私は北見赤十字病院を第2希望で登録。「もしかしたら第1希望でマッチするかも」と思い、順位を上げたら、無事マッチ。タイミングがよかったようです。
── 初期研修のマッチングで重要視していた条件はありますか
塩口医師: 地域の基幹を担う大きな病院で研修を受けたく考えていました。加えて、診療科が細分化されていること、初期研修医が10名程度の規模感であること。それが私の理想でした。その点、北見赤十字病院は3次救急の基幹病院で初期研修医の枠が毎年10名。診療科・部門も多彩です。私にとって理想的な環境です。
── 生まれ育った東京から離れることに抵抗はありませんでしたか
塩口医師: 考え方次第ですが、東京は他府県からのアクセスが容易。たとえ、距離が離れた北海道でも、飛行機に乗れば簡単に東京に帰れます。私の体感としては、関東の端から都内に移動するのと、北海道から飛行機で帰るのは、そんなに変わりません。なので、離れることに抵抗はありませんでした。
── 北見赤十字病院が所在する北見市は気温、積雪量が東京都とは全く異なります。気候には慣れましたか
塩口医師: 外に出れば、やはり寒いと思います。しかし初期研修医の職場は基本的に室内。北海道でも室内は、基本的に暖かいですよ。研修中はなんだかんだ動くため、冬場であっても半袖になることも。自宅でも石油ストーブを焚いていますから、寒さはなく、とても快適です。
── 車はお持ちでしょうか
塩口医師: はい。
── 北見市は交通状況が都内とは大きく異なると思います。運転面で苦労はありましたか
塩口医師:
都内在住時、両親の車で定期的に運転はしていました。特別運転していたほうではありませんが、「都内は道が狭くて運転しづらいし、首都高も難しい」。そんな印象です。
逆に北海道は、入職時の4月は雪もなく、道が広くて平坦。渋滞もなくて快適に運転できています。
北海道と北見赤十字病院の雰囲気は?
── 実際に北海道に来て、イメージと違った点はありましたか
塩口医師: 北海道の方々は、道外の人に対し、温かく、興味を持って話しかけてくれます。私自身、「東京から来たばかりです」と話すと、「なんで北見に来てくれたの?北海道は楽しい?」と話が弾みます。北海道自体、開拓の歴史があり、移住者に開けた雰囲気なのかもしれませんね。
── 北見赤十字病院は初期研修医の枠が10名ですね。道外出身の研修医も多いのでしょうか
塩口医師: 生まれも育ちも北海道という先生は少ないですね。私の同期の出身を参考までにお伝えします。まず私が東京医科大学。他2名の初期研修医が、九州大学の出身。それ以外は、旭川医科大学、札幌医科大学、北海道大学と、北海道内の大学出身となっています。ただし、北海道内3大学の先生でも、出身が道外ということも。半分程度は道外出身者なので、出身が気になることはないと思います。

── 院内の雰囲気はいかがでしょうか
塩口医師: 当院は、立場や年齢関係なく、すれ違う際には必ずあいさつを交わします。見学のとき、当院のあいさつの文化には驚きました。当たり前といえばそうなのですが、あいさつは気持ちがいいものですね。
── 北見赤十字病院は小児科や産婦人科もありますね。塩口先生の初期研修は院内が中心でしょうか
塩口医師: はい。1年目は全て院内です。2年目に、地域医療と逆たすきの関係で、北海道大学病院もしくは札幌医科大学附属病院に行く予定です。
北海道の医療圏は広大。当直回数や疾患の傾向は?
── 救急医療に関して、傾向や状況はいかがでしょうか
塩口医師: 「どんな疾患でもやって来る」と感じています。2次医療未満の極めて軽い症状の方から、ドクターヘリやドクターカーによる重症患者の搬送などさまざま。私はまだ初期研修1年目ですが、ドクターカーで現地に出動し、交通事故の対応にあたった経験もあります。
── 北海道の医療圏は広く、距離も離れています。当直の上で、大変なことや独特なところはありましたか
塩口医師: 当院はオホーツク3次医療圏内の中核的な立ち位置にあります。当医療圏は全国的に見ても広大ですが、エリア内の人口はさほど多くないため、救急部門が特別忙しいとは感じません。
── 初期研修医の当直回数はいかがでしょうか
塩口医師: 基本的に初期研修医はみんな当直に入りたがっています。しかし当直はひと月30枠と限りがあります。私の代は9人の初期研修医がいて、ほぼ均等に分け合う形です。病院によっては、事務や先輩が当直の当番日を調整すると思いますが、当院は初期研修医が自分たちで当番を決められ、非常に自由度が高いです。当直明けは早く帰って、旅行に行く先生もいます。
── 当直の体制について教えてください
塩口医師:
私たち研修医は、救急車の対応がメインです。体制としては、基本的には、1年目と2年目の初期研修医がそれぞれ1名ずつ入り、その上の救急車対応の先生が1名の合計3名体制。救急車対応は、専攻医が行うこともあれば、専門医以上の先生が入ることもあります。
それとは別に、指導医クラスの先生が入る「全館当直」もあって、こちらでは病棟やウォークインの患者さんを診ています。
── 当直は1回で何人ほど患者さんを診ますか
塩口医師: 救急車が1台も来ない日もあれば、1、2台のこともあります。年末年始は他院が動いていない影響で、全く休めず多忙でした。そんな特別な当直を除けば、1回の当直で3~4時間は眠れています。実のところ、最初は「当直って、こんな感じでいいのかな」と不安に思っていたのですが、続けているといろいろな症例を経験できました。
── 当直に限らず、外来などで遠方から患者さんは来ますか
塩口医師: はい、知床や斜里、釧路や旭川など、医療圏が違うエリアの外来患者さんが来ます。われわれのエリアでは、そういったケースは珍しくありません。例えば、自宅は北見市だけど、仕事の関係で旭川にいて、そこでなにかあって、当院まで3時間以上かけて車で来る患者さんなどがいます。
休日は週何回?休日の過ごし方は?勉強時間は?
── 土日はお休みでしょうか
塩口医師: なかには土曜日半日出勤などの病院もありますが、当院は土日祝日がお休みとなっています。当直がない場合は、土日が丸々お休みです。
── 休日の過ごし方はいかがでしょうか
塩口医師: 私は北海道に来てからというもの、よくドライブしています。初期研修1年目だけで札幌、旭川、美瑛、富良野、網走、釧路、帯広、根室に行きました。ドライブでは、その土地を知れますし、運転中も景色がきれいでとても気に入っています。
── 退勤時間はいかがでしょうか
塩口医師: ありがたいことに、「研修医を遅くまで残さず、早く帰ってリフレッシュさせよう」という先輩たちの雰囲気を感じます。通常勤務では、夕方6時か7時には帰っています。ただし、外科系の臨時手術に入る場合など、遅くなることも。しかし内科系なら7時を過ぎることはまずないと思います。
── 自己学習はどちらで行っていますか
塩口医師: 自宅もしくは研修医室で勉強しています。研修医室は一人用のスペースがあって集中でき、学習書や参考書も揃っています。同期や先輩も、仕事がないときは研修医室にきて勉強しています。
北海道の暮らしは?外食や外部研修に伴う引っ越しの不安は?
── 初期研修2年目は北海道の別エリアに引っ越しが必要ですね。不安はありませんか
塩口医師:
住まいに関しては、病院側がマンスリーマンションもしくは大学病院の寮を用意してくれます。その点の不安はありません。
ちなみにお給料は、大学病院研修中も当院からいただきます。外部研修中に給料が低くなる心配もありません。
── 1年目の現在、東京に帰る頻度はいかがでしょうか
塩口医師: 北海道に来て8カ月ほどですが、5,6回帰京しました。実家に帰ることもあれば、都内の研修会参加のために東京に戻ったこともあります。土曜日に飛行機に乗って帰ったり、金曜日の当直明け午後の飛行機に乗って日曜日中に北海道に戻ったりしています。特に無理なく、北海道と東京を往復できています。
── 当初、北海道に引っ越す際に困ったことはありましたか
塩口医師: 冬服に関して、東京からは一切持って行きませんでした。都内の貧弱な冬服は通用しないと思い、「現地調達でいいかな」と考えたのです。その選択は正解でした。当院周辺のユニクロで十分、北見で生活できる衣類を揃えられました。引っ越しや服装に関して特に困ることはなかったですね。
── 北海道の車中心の生活はいかがでしょうか
塩口医師: 特別、苦労は感じていません。車で10分も走れば、大型家電量販店「100満ボルト」、ショッピングセンター「イオンモール」があって、家具や家電は簡単に揃います。日用品や食品もすぐ近くにスーパーがあるので、不便は感じていません。
── 勉強するカフェなどありますか
塩口医師: 病院周辺には、スターバックスが2件あるなど充実しています。
── 外食はいかがでしょうか
塩口医師: 北見赤十字病院から5分ほど歩くと雰囲気のいい飲み屋街があります。勤務後、さくっと飲みに行けます。友人と一杯飲むことも好きですが、私は一人でも行けるタイプ。仕事終わり、軽く食事をとって、一人でバーに行くなど、満喫できています。
── 北海道でお気に入りのお店や料理はありますか
塩口医師: 北見市は焼肉が有名な街で、焼肉屋が点在。ホルモンの種類と品質は都内以上かもしれません。
── 海鮮はいかがでしょうか
塩口医師: 海鮮は、北海道ならでは。外せません。道内で大人気の回転すし屋「トリトン」は、北見市が発祥です。札幌や旭川など中心エリアでは混雑してなかなか入れませんが、北見ではほとんど並ぶことなく食べられます。病院近辺に2店舗あって、私も重宝しています。
── 現在のお住まいは寮でしょうか。マンションでしょうか
塩口医師: 病院が借り上げたマンションに住んでいます。私に限らず、初期研修医は基本的には、病院借り上げのマンションに住みます。部屋はいくつかあり、自分で選べないのですが、どの部屋も徒歩10分以内にあります。ちなみに私の部屋は病院まで徒歩5分とかなり近い方です。
── 通勤で苦労はありませんか
塩口医師: 意外かもしれませんが、通勤は都内のほうが大変だと感じています。関東の通勤・通学は電車で片道1時間が当たり前ですよね。北見は雪があるとはいえ、片道5分で職場に到着します。通勤は、こちらのほうがらくだと思います。
── ランニングが趣味と伺いしましたが、北海道でも続けていますか
塩口医師: はい、続けています。都内も走りやすいのですが、北見も負けていません。どの道も広くて快適ですし、公園や自然が多く、走っていて清々しくなります。近くのスポーツジムにも通っており、気分次第で室外、室内に分けて走れます。
北海道での研修と暮らしの魅力は?働き続けたくなった理由
── 塩口先生から見た北海道の魅力を教えてください
塩口医師:
「絶対なにがなんでも都会がいい」とのこだわりがある先生もいるでしょう。特別なこだわりがなければ、北海道でもしっかり研修を積めますし、衣食住どれも不便なく、楽しい毎日を過ごせるのではないでしょうか。
私個人の話になりますが、医師1年目前半は北海道のさまざまなところに行きました。北海道を知れば知るほど、キャンプをはじめとしたアウトドア、ウィンタースポーツなど、やりたいことがドンドン見つかります。インドア派の人でも、冬は邪魔されず、暖かい部屋でゆっくり過ごせるので、そういう意味で北海道ライフを満喫できると思います。
── 初期研修のマッチングについてアドバイスはありますか
塩口医師:
北海道に限らず、救急が充実している病院は人気が集まりますよね。しかし本当に自分が救急をやりたいのか、もう一度じっくり考えてみてはいかがでしょうか。「救急でバリバリやりたい」と思う医学生は一定数いますが、実際、経験したら「思っていた以上に大変。当直もきつい」と挫折するかもしれません。
先にお伝えしたとおり、当院は3次救急の基幹病院でありつつも、当直は落ち着いている状況。私はそんな環境で着実に症例を経験できています。当院のような道内の市中病院も、一度検討してみてはいかがでしょうか。
── 塩口先生は3年目以降どのような道に進む予定でしょうか
塩口医師:
実は「北海道は初期研修の2年だけ」。そんなつもりで北海道に来たのですが、医療はもちろん、食事やプライベートも充実しているので、3年目以降も当院に残ろうかなという気持ちに変わりました。
まだ正式に決定していませんが、消化器内科の専門医を目指して、当院でキャリアを積みたいですね。
── 北海道外の医学生に向けてメッセージをお願いします
塩口医師:
私自身、北見赤十字病院に入るまでは、北海道に縁もゆかりもありませんでした。私はマッチング前、「合わなかったら初期研修の2年が終われば帰ればいいかな」と割り切って北海道に来たのですが、帰る気は日に日に薄れています。それくらい、北海道は魅力的です。
道外の後輩に向けたメッセージとしては、少しでも北海道が気になるのであれば、まずは病院見学に来て欲しいと思います。もし気に入ればそれでいいですし、違うと感じたら初期研修が終わると同時に帰ればいいだけ。そんな気軽さがあってもいいのではないでしょうか。
── 5月の「道プレ」では、北見赤十字病院の医師として出展なされると聞きました
塩口医師:
はい。参加します。スライドやパワーポイントの資料で説明もしますし、学生さんからの質問に直接答えたいとも思っています。
道プレに限らず、説明会に参加予定の医学生さんに一つアドバイスをします。あらかじめ病院側への質問を考えておくことをオススメします。私が某説明会に参加したとき、病院からの説明だけでは不十分だと感じました。自分が聞きたいこと、知りたいことを事前に考え、ズバッと聞いた方が自分のためになります。最後になりましたが、ぜひ道プレにお越しください。全国の医学生のみなさん、会場でお会いできることを楽しみにしています!
■「道プレ!2025~北海道の臨床研修病院合同プレゼンテーション2025札幌~」の詳細は ➡ こちら
―― 塩口医師、ありがとうございました。