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産業医とは?職場環境を守る役割と仕事内容を解説|医師の働き方ファイル

必要な資格 ●医師免許 ●認定産業医
あると有利資格経験 【内科専門医】
健康診断後のフォローや生活習慣指導などに役立ちます
【精神科専門医】
従業員のメンタルヘルス対応を求める企業が多く、精神科の専門知識は高く評価されています
【臨床経験】
認定産業医資格の取得に臨床経験は必要ありません。しかし、採用では臨床経験が高く評価される場合もあります
【労働衛生コンサルタント】
職場に助言し安全衛生を高める国家資格です。専属産業医は、資格を取得している人が多い傾向にあります
休日 土日・祝日/年間休日110〜130日
主な勤務先 企業
※官公庁・教育機関などに勤める場合もあります
想定年収 【専属】1000万円〜1400万円
【嘱託】日給1〜8万円(求人により大きく異なる)
雇用形態 専属(常勤)
嘱託(非常勤)

産業医の仕事内容と役割とは

産業医は、企業や事業所で働く人の健康を守り、職場環境を安全かつ快適に整えるために活動する医師です。勤務医や開業医は、主に診療や治療を通じて個人の病気に対応しますが、対して産業医は、従業員が健康的に働き続けられるよう、職場そのものの環境や働き方を整えるための支援に重点を置いています。
言い換えれば、産業医は怪我や病気の予防や健康管理、職場の健康リスク低減に重きを置いた医師であり、組織全体の健康をサポートする存在です。

実際の仕事内容

専属、嘱託や、勤め先の業種などによって異なる点もありますが、主には以下の仕事を行います。

健康診断のフォロー

従業員の健康診断の結果を確認し、血圧、血糖値などに所見があれば、本人に詳しく説明の上、生活習慣の改善指導を行います。必要に応じて病院受診を勧めたり、または夜勤禁止の意見書を出したりもしています。

長時間労働者の面談

一定時間を超える残業をしている従業員を対象に、睡眠、食欲、職場での人間関係などのヒアリングを通じて、メンタル・身体の状態を把握します。そのうえで、残業時間の短縮や一時的な業務軽減を提案することもあります。

メンタルヘルス不調者の対応

ストレスチェックで高ストレスと判定された従業員や、うつ・適応障害などで休職中の従業員と面談を行い、状況の把握や再発防止などを検討します。また、心身の問題で休職中の従業員の復帰もサポートします。

衛生委員会に参加

衛生委員会に出席し、熱中症や感染症対策など、事業所の健康課題に対して医学的視点から助言・改善提案を行います。

職場巡視

職場を巡回し、照明、騒音、換気、温度湿度などに健康上の問題がないかを確認します。化学物質を取り扱う職場や重機作業の現場では、安全管理や健康リスクの有無についても重点的に確認・指導を行います。

産業医になる難易度と求人傾向

専属(常勤)の産業医は、従業員1000人以上の事業場において法的に選任が義務付けられており、主に大手企業や大規模事業所に配置されるのが一般的です。このため、ポストの数は限られており、求人倍率は高めです。
特に、内科や精神科での臨床経験が豊富な医師や、すでに産業医として実務経験がある医師が優先されやすくなっています。
一方で、嘱託(非常勤)の産業医であれば、産業医を未経験からスタートできる求人も多く見られます。嘱託産業医は複数の企業・事業所を兼任したり、臨床業務と並行したりするスタイルが一般的で、フリーランス的な柔軟な働き方が可能です。
なお、専属・嘱託を問わず、都市部では応募者が集中しやすく、求人倍率が高くなる傾向にあります。

認定産業医の資格を取る方法

産業医として働くには、医師免許に加え、所定の研修を修了する必要があります。研修の実施機関には、日本医師会や産業医科大学などがあり、以下のような特徴があります。

● 日本医師会
日本医師会が実施する講習を修了すると、「認定産業医」の資格を取得できます。5年ごとの更新が必要で、その際には単位取得も求められます。

●産業医科大学
産業医科大学が実施する講習を修了すると、「産業医」の資格を取得できます。更新制度はなく、一度取得すれば継続して活動できます。

講習は、集中型であれば最短1〜2週間で取得できるものから、数カ月〜1年かけて受講するスタイルもあります。初期研修中から産業医を目指し、計画的に講習を受ける若手医師も増えています。

就業形態とワークライフバランス

専属(常勤)の産業医は、平日週3~5日の勤務が一般的です。勤務時間は9:00~17:00など、勤め先の企業に準じた就業時間で働くケースが多く、土日・祝日は基本的に休みとなります。また、残業や夜間・休日の呼び出しは原則ありません。このように勤務時間が安定しているため、規則的な生活を送りやすく、ワークライフバランスを重視する医師にとっては非常に魅力的な勤務形態といえます。
一方、嘱託(非常勤)の産業医は、月1回〜週数回のペースで勤務する柔軟なスタイルが特徴です。1件あたりの勤務時間は数時間〜半日程度に限られることが多く、複数の事業所を兼任する働き方が一般的です。

こんな人は向いているかもしれない!

  • 働く人の健康支援に関心がある
  • 臨床以外の医学的知識(労働衛生・メンタルヘルスなど)を深めたい人
  • コミュニケーションが得意な人
  • さまざまな職種や立場の人と丁寧にやりとりできる人