医学部卒業後の一般的な進路として、臨床医として働く方がほとんどです。しかし、医学生の進路は臨床医だけではありません。幅広い選択肢を考える上で、医学生以外の大学生と同じようにインターンの体験は役立ちます。
今回は、医学生向けのインターン参加理由や募集例、参加方法について解説します。臨床医以外の道や、医学生向けのインターンに少しでも興味のある方は必見です。
インターンとは
インターンとは、大学生が社会に出る前に、企業内で就業体験をする制度です。インターンを行うことで、各職種や業種における仕事内容や職場の雰囲気、それぞれの企業風土を理解することができます。
また実際の仕事を体験することで、自身の適性がわかり就職活動の参考になります。経済産業省のアンケート調査(*1)によると、自身の強みや適性を知る上では、インターンの期間が長くなるほど満足度が高い傾向にあることがわかりました。
*1 経済産業省:学生・企業の接続において長期インターンシップが与える効果
についての検討会学生に対するアンケート調査結果
医学生でもインターンが可能?
他学部の学生では現代の就職活動においてインターンを経験することは一般的です。医者の就職活動においてもインターンが必要なのでしょうか。
また、医学生でも一般企業のインターンに参加することは可能なのでしょうか。確認していきましょう。
研修とは別にインターンへの参加が可能
インターンは、医学生以外の学生にとって必要不可欠なものとなりつつあります。しかし、医師を目指す医学生にはインターンは必要ありません。医学生で「就活」というと、志望の病院と「マッチング」するために、病院見学へ参加することから始まります。
マッチングでは、医学生が初期臨床研修を希望する病院を受検し、受検後に希望する病院に順位をつけてマッチングを管理するマッチング協議会に就職の申請をします。病院側も同様に、受験した医学生の中から、採用したい医学生に順位をつけ、この順位をマッチング協議会に提出します。
この両者の情報をもとに、マッチング協議会がそれぞれの医学生の就職先を決定する仕組みです。
医学生の場合の就職活動というと、上記の「マッチング」を指すことがほとんどですが、医学生であっても、一般企業のインターンに参加することは可能です。医学生の場合は、医療系のベンチャーやヘルスケア企業のインターンに参加することが多い傾向にあります。
医学生がインターンに参加する時期
医学生の場合、4年次に臨床実習に参加する資格を得るために受験が必須となるCBT(Computer Based Testing)、OSCE(Objective Structured Clinical Examination)があります。これらの試験の時期は大学により様々ですが、一般的には4年次の後半に行われることが多いです。試験合格のために勉強も必要であるため、これらの試験が終了してからインターンを検討しましょう。
そのため、インターンに参加する時期は、4年次の秋から冬頃がおすすめです。
医学生がインターンを行う理由や目的とは
医学生がインターンを行う理由や目的を整理しましょう。インターンに興味のない医学生も他の医学生の参加理由を知ることで、進路選択の参考になるかもしれません。ぜひ、目を通してみてください。
臨床医以外の道を知るための社会勉強
医学生は医学部卒業後、大半の方は臨床医となりますが、医学生であっても臨床医以外の道はもちろんあります。一般企業に就職して産業医となり、職場の健康管理に携わったり、製薬会社に就職してメディカルドクターとなり、臨床開発や薬の安全性評価に携わったりする選択肢などです。
こうした将来のキャリア選択を増やすために、企業のインターンに参加して臨床医以外の道を知ることは非常に重要です。また、将来的な医師からの転職を考慮する際にも、学生時代のインターンの経験が役立ちます。医師の道を考えている方でも、社会勉強としてインターンを行った経験は決してマイナスにはなりません。インターンを社会勉強として大いに活用してみましょう。
行政への興味
医師になるための学びを活かした行政の仕事に興味がある方にとってもインターンはとても有益です。厚生労働省の中に医系技官という職種があります。医系技官とは、医師免許や歯科医師免許を保有し、国民の健康を守る目的で保健医療の制度作りに携わる行政官です。
実際に将来のキャリアの選択肢として、医系技官の道を考えている医師や医学生(医科のみ)を対象としたインターンを厚生労働省が実施しています。行政の仕事はイメージがしづらいため、インターンに参加して、仕事内容を実践的に理解することは医系技官の道を考える際に非常に役立ちます。
医療業界の理解を深めるため
医者を志している方でもインターンを経験することで、医療業界の理解が深まるというメリットがあります。医学生向けのインターンには医療系のベンチャーが多く、インターンを通じて医療業界の最先端の技術や、ニーズを把握することができます。また、企業の方と仕事に携わることで、臨床現場だけでは学べない、医療業界の知識を学ぶことができます。また、一般の人からみた医療業界の問題点を知ることもでき、さまざまな視点に立って物事を考える術を身につけられます。
将来臨床医として働くというキャリアを定めている医学生にとっても、医療関係企業のインターンに参加したことで得た知識や経験は臨床現場で役に立ち、自身の強みとなります。
医学生向けインターンの募集例
ここでは医学生向けインターンの募集例を紹介します。実際にどのような形でインターン募集がなされているのか、どういったことが学べるのか確認してみてください。
医系技官を視野に入れている
医学生に向けた夏の職場体験(厚生労働省)
厚生労働省では、医系技官を将来のキャリアとして考えている医学生や医師を対象に、令和5年の7月下旬~8月下旬「夏の職場体験」を実施していました。インターン期間は1週間であり、医系技官の部署で業務の補助作業を行ったり、医系技官に同行して仕事を間近で見学したりします。
受入れ課室としては、大臣官房や医政局などがあります。インターン最終日にはインターン生のショートプレゼンがあり、参加者同士の質疑応答や医系技官からのコメントを通じて、仕事に対する理解を深めていきます。
応募方法は、「令和5年夏の職場経験(臨床医および医学生を対象)応募フォーム」というページから可能でした。本職場経験に参加する際に必要となる交通費、滞在費等に関しては、自己負担でしたが、医系技官を視野に入れている医学生にとって非常に役立つインターンであったといえます。
公衆衛生医師に興味のある
全国の医学生向けインターン(新潟県庁)
新潟県庁では、全国の医学部に在籍する学生を対象に、随時インターンを開催しています。実習時間は、週休日・休日を除く月曜日から金曜日の午前8時30分から午後5時15分までとなっており、実習期間は希望を踏まえて決定されます。
実習では、感染症対策や地域医療提供体制整備といった県の医療政策に従事する職員の業務の補助を行います。具体的には、会議資料の作成や、部長レク等への同席、会議への出席(傍聴)等となっています。
インターンを申し込むためには、実習希望期間初日の2週間前までに、在籍する教育機関から「医学生インターンシップ申込書」を提出する必要があります。提出後、受入れの可否等を記載した決定通知書が、在籍する教育機関に届きます。ただし、実習生に旅費や宿泊費等の手当は支給されず、インターンにかかる費用は自己負担となります。
医学生がインターンに参加する方法
では、医学生がインターンに参加する方法にはどのようなものがあるのでしょうか。この点を詳しく説明します。
Wantedlyから探す
Wantedlyとは、日本発のビジネス版SNS(ソーシャルネットワーキングサービス)であり、Wantedlyのサービスを通じて、気になる企業の人事部に話を聞きに行ったり、企業が主催する講演会、先輩社員との座談会などに参加したりすることができます。
インターンを募集している企業も多数あり、掲載企業数は30,000社を超えています。多くの企業の中から、自分が興味を抱く企業を探し、興味のある企業のインターンに応募するのが良いでしょう。医療系ベンチャー企業で医学生向けのインターン募集も行われていました。
厚生労働省のホームページをチェック
厚生労働省のホームページを定期的にチェックするのもおすすめです。「医学生向けインターンの募集例」で紹介したように、厚生労働省では医系技官の職場体験を定期的に実施しています。
令和6年度のインターン募集の詳細はわかっていませんが、例年行われているため、医系技官を視野に入れている方は要チェックです。
友人に聞く
医学生をピンポイントに求人しているインターンでは、医学生同士の情報交換からインターン先の情報が手に入ることもあります。最近ではnoteやX(旧ツイッター)で情報発信している医学生もいるため、これらの情報も参考になるでしょう。大学の同級生で、インターンを行っている人がいるかどうか、まず確認してみるのも1つの手です。
まとめ
医学生がインターンに参加するメリットや目的、参加方法等について説明しました。
インターンに参加することで、臨床医以外のキャリアを知ることができ、また医療業界に対する理解も深まります。臨床医を志している方でも、インターンで得た知識は臨床の現場で活きます。
インターンに興味がある医学生は、4年次のCBT、OSCE終了後に参加を検討されるとよいでしょう。将来のキャリア選択のために、インターンをするべきかどうかじっくりと考えましょう。