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臨床実習とは?実習の種類や目的を確認しよう

医学部で学び、医師を志す学生は必ず臨床実習を経験します。医師になる前に、実際の臨床現場で実習を行うことは大変重要です。ただし、今までの座学とは異なる学習でもあるため、いざ始まると混乱してしまう医学生もいます。

そのような医学生のために、今回は臨床は実習の期間や目的、進め方、そして医学生が苦労する点などを詳しく解説していきます。

医学部の臨床実習とは

臨床実習とは病院で実施される実習であり、実習期間は大学や学科によって異なりますが1年次で1週間、4年次で4週間ほどです。医学部や歯学部は、合計約2年間の臨床実習期間があります。医学部の臨床実習には、早期体験実習や解剖実習、見学型臨床実習、参加型臨床実習などがあります。それぞれの実習について、具体的に説明していきます。

早期体験実習

早期体験実習とは、見学型臨床実習や参加型臨床実習の前教育として、1〜2年次に行われる臨床医学実習の1つです。早期体験実習の目的としては、以下の3つが挙げられます。

1.コミュニケーション能力を高める

2.医学部で学ぶモチベーションを高める

3.患者の心を知る

早期体験実習では、外来患者のエスコートをしたり、病院における各部署の業務を経験したりします。
これらの経験を通じて、医療に貢献している達成感を得ることができ、モチベーション向上につながっていきます。また病院全体の成り立ちや動き方を把握し、理解することにも役立ちます。

解剖実習

解剖実習とは、医学部の学生4~5人でグループを作り、実際のご遺体を自身の手で解剖する実習です。臓器や筋肉、神経がどのような位置にあり、どのような働きをしているのかを自身の目で確認し、座学で学んだ臓器や筋肉、神経を同定していきます。
人体の構造を知るとともに、解剖に関する技術的な向上を図ることを目的としています。また、一人の人間としてご遺体にどう向き合うかを深く考え、人間の身体に自分の手でメスを入れることの重みを知ることができます。

見学型臨床実習

見学型臨床実習とは、医学部高学年の学生が実際の医療機関で行う実習であり、上級医が実習を指導します。主に医学部の4年次~6年次に実施され、外来や手術の見学を通じて現場の臨床を学びます。病棟実習において、患者さんを担当することもあるのが特徴であり、患者さんの診察や治療を通じて、色々な視点から疾患を学ぶことができます。

参加型臨床実習

参加型臨床実習とは、医学生が興味のある診療科を選択し、1か月などの期間限定で、選択した診療科の医療チームに入り、より実践的な臨床能力を身に着ける実習です。医学生は臨床実習医学生(スチューデント・ドクター)として医療チームに参加し、指導医とともに診察や治療にあたります。
医学生が診断や治療方針を最終決定することはないものの、自分の力で患者さんに問診や診察を行うことで、診断や治療について考える機会を得ることができます。また、医師免許取得後に始まる初期臨床研修とのギャップを埋める目的として活用することもできます。


臨床実習の目的は?

臨床実習は医学部の高学年から実施されるのが一般的であり、医師としての責任感や協調性、指導力を養うことを目的として行われます。
また実際の医療現場において、診察や治療で実際の患者さんと向き合いながらうことで、大学で学んだ診療方法(カルテの書き方やコミュニケーションの取り方など)を実践し、疾患の知識などをしっかりと身につけることも目的としています。

臨床実習では幅広い視点で経験を積みながら学べるため、教科書だけではわからない多くの気付きをが得られるでしょう。

医学部での実習の変化

近年、医学部での実習は見学主体から実践重視へと変化し、臨床実習の時間数も増加傾向にあります。
こうした実習の変化は2023年4月より改正医師法が施行され、臨床実習における医学生による医行為が法的に可能となったことや、「2023年問題」というアメリカからの通告が関係していると考えられます。医学部での実習の変化について詳しく紹介していきます。

臨床実習の時間が増えている!

臨床実習の増加の要因に「2023年問題」があります。アメリカで臨床研修を受けるための基準が変更となったことにより生じた問題です。

これまでは日本の医学部を卒業すると、自動的にアメリカの医師国家試験(USMLE)の受験資格を得ることができました。しかし、2010年に「2023年以降(新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、2024年以降に変更)、受験資格は世界医学教育連盟(WFME)が認定した大学医学部の卒業生に限る」という通告があり、これに対応する必要が生じました。

アメリカの医学部では70~80週間の臨床実習が行われますが、これまでの日本では50週前後しかなく、国際基準をクリアするためには、アメリカの医学部と同等の臨床実習期間を確保する必要が生じました。そのため、現在は国内の多くの医学部で、臨床実習の時間が国際的な基準に合わせて延長され、70週前後まで増加しています。
また、臨床実習も「参加型臨床実習」が主流になりつつあります。


参加型臨床実習に参加するには

では、参加型臨床実習に参加するにはどのような要件が必要なのでしょうか。日本国内の医学部では、臨床実習前に行われる共用試験に合格する必要があります。この点について、詳しく説明していきます。

4年次に行われる共用試験を通過する必要がある

参加型臨床実習に参加するためには、医学部4年次に共用試験(CBT・OSCE)を受ける必要があります。

CBT(Computer-Based Testing)とは、臨床実習に求められる知識や問題解決能力について問う択一試験です。学生一人一台のコンピューターを用いて、コンピューター上で出題される問題を解答していきます。
OSCE(Objective Structured Clinical Examination)とは、臨床実習を行うにふさわしい態度・診察技能を習得しているかを評価する試験です。模擬患者を用いた診察や、マネキンを相手に処置を行うなどの試験があります。これらの試験は、医療行為を患者に施す法的根拠となるため、通過が必須となります。共用試験が公的化すると、臨床実習を行う医学生の水準が「準国家試験」や「一次国家試験」に合格した人と同じ水準になります。

試験を通過すると晴れてスチューデント・ドクターに

臨床実習医学生(スチューデント・ドクター)とは、全国医学部長病院長会議により認定される資格を指します。スチューデント・ドクターの資格は、全国の医学部で行われる共用試験に合格し、臨床実習に求められる知識や技術、態度などを習得していると認定された際に与えられます。

スチューデント・ドクターの資格を取得すると、診療参加型実習において医療行為が認められるようになります。医療行為には、指導医の監督下で行うものと、指導医が実施する医療行為を介助したり、見学したりするものがあります。これらはいずれも患者の同意を得た上で、行うことが原則とされています。スチューデント・ドクターが公的化されることで、経験と知識を積み上げた医師が増え、医療レベルの向上や患者満足度が高まることが期待されています。


共用試験(CBT・OSCE)の対策はMEC Net.で

MEC Net.では医師国家試験はもちろんのこと、共用試験や進級試験にも対応できる講座が充実しています。共用試験に特化した講座や問題演習があり、またCBT用の模擬試験も受講可能です。共用試験を控えている医学生の心強い味方になるでしょう。 試験対策に不安がある方は、ぜひ一度MEC Net.の活用をご検討いただければと思います。

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まとめ

多くの経験と知識を積み上げた医師として活躍するためには、臨床実習での学びは欠かせません。それぞれの実習の目的を理解して臨むことで、より実践的な知識やスキルを身につけることができ、充実した臨床実習となります。

参加型臨床実習に参加するためには、4年次に行われる共用試験を通過する必要があります。参加型臨床実習に参加するための対策に不安がある方は、に、MEC NETを活用していただき、共用試験の合格をつかみ取りましょう。