専門(後期)研修プログラムの病院見学は、マッチング同様、採用活動の一環として大切です。初期研修から専攻医としてそのまま残る研修医と話したり、内々定者数や見学者数などから人気度がわかったり、他では得られない情報を入手できます。 今回は、そんな専門研修における病院見学のポイントを解説します。
研修医1年目に見学に
行ってみては?
研修医2年目で見学を始めるのは遅い
「全科ローテしてから専門研修を決めたい。見学は2年目かな」
このように考えている研修医がいるかもしれません。
しかし2年目の動き出しではいくつか懸念点があります。
懸念点①
研修医2年目4月から専攻医登録の11月までは約半年。時間が足らず、見学数が限られる
懸念点②
一部病院は初期研修医に内々定を出している。専門研修の枠が公表中の募集より減っていることも。見学が遅れると病院内の状況がつかめずプログラムを選ぶのが大変
懸念点③
初期研修医の指導が始まる4月~7月は専攻医(1年目)が多忙。専攻医と話せないおそれも
以上の懸念点から、シーメックでは初期研修1年目から病院見学を始めることをオススメしています。
「忙しい!」「まだ診療科に迷う」見学は後回しでいい?
迷うくらいなら見学に行ってしまおう
シーメックでは、専門研修プログラム迷う研修医の相談を受けています。 研修医から、次のような悩みを多くいただきます。
専門研修探しでよくある悩み
・サブスペを迷っている
・診療科が決まっていない
・市中か大学病院か
このようなよくある悩み。病院見学が解決の糸口になるかもしれません。
「ここで働きたい」「この分野・手技をもっと極めたい」「入職後にサブスペを決められるプログラムにしよう」
など、病院見学がきっかけとなって、自分にあった病院やプログラムが見つかる可能性があるのです。
初期研修終了後3年目からのキャリアアップをサポート致します。「専門が決められない」、「新専門医制度や病院の詳細情報を知りたい」、「プログラム外で働きたい」など、どのようなご相談も承ります。
まとめて休める時期に集中して複数病院を見学
くどいようですが、「病院見学開始のタイミングは研修医1年目」。
この点について、さらに付け加えます。
ベストな時期は、「まとめて有給を取れる診療科を回っているとき」。
では、「どの診療科にローテしているときが病院見学のタイミング?」。
当然の疑問ですね。病院によって休みやすい診療科はまちまち。
「●●科が病院見学のベストタイミング」と一律のお伝えができません。
休みを取りにくい傾向にあるのは、「当直やオンコール回数が多い診療科」「地域研修」「外病院の研修」です。ご自身が勤めている研修先で、休みを取得しやすい診療科を把握するようにしましょう。
見学先では何を見る?
見学1日の流れ(内科)
8:00 集合
8:15 内科全体カンファレンス参加
8:30 内科外来&救急外来見学
12:00 昼食(院長、プログラム責任者、指導医、先輩専攻医が参加)
13:00 病棟回診
16:30 夕方カンファレンス参加
17:00 終了
※見学終了後に懇親会
病院によっては、内視鏡やカテなどの手技の見学ができることもあります。
複数回の見学を!必ず目的を持って行くこと
気になっている病院は、複数回見学するようにしましょう。何度も見学をくり返すことで、プログラム責任者、指導医、先輩専攻医に顔と名前を一致して覚えてもらえます。
ただし、目的のない病院見学はNG。2回目以降の見学は、理由を明確にして臨んでください。点数稼ぎだけを目的とした見学は、病院にとって迷惑。「夜間当直を見学したい」「オペを見学したい」「外来を見学したい」など何を見みるかはっきりと定め、病院側に意図を伝えてください。
院長、部長、プログラム責任者らと話せる!その場でオファーが出ることも
病院見学では、面接官や採用担当を務める院長、部長、プログラム責任者と食事することもあります。会食は、採用活動にとって大チャンス。以前、シーメックコンサルタントが担当した研修医は病院見学で院長と会話。その場で「ぜひうちで専攻医になって欲しい」と好感触を得たケースもあります。
先輩専攻医の話は貴重!プログラムの利点・課題が浮きぼりに!?
面接官クラスの先生方へのアピールと同じくらい大切なのが「先輩専攻医との会話」です。面接官クラスの先生方は、いい面ばかりを話しがち。
一方、先輩専攻医はプログラムに書かれていない実際ベースの話をしてくれやすいのです。待遇・設備・外部連携施設のローテーションなどの本当のところを聞いてみましょう。募集要項と実情のすり合わせは大切です。
また、J-OSLERなどのポートフォリオの進み具合やサポート状況も聞いておきたいところですね。
夜間の説明会やオンライン対応もしばしば
「研修医は日夜問わず働いて多忙」との配慮から、病院によってはオンラインの説明会や懇親会を受け入れています。
気軽にいくつもの見学はなかなか難しい。そんな研修医は、一度オンラインで説明会だけでも参加してみてはいかがでしょう。
オンラインの場で興味が湧いた病院は、自然と現地で見学したくなるはず。病院見学に動き出す時期が遅れるよりは、まずオンラインを活用して病院の情報収集をしたほうが有利になると思います。
「忙しいけど現地で見たい!」
過去シーメックのコンサルタントが案内した研修医の例を2つ紹介します。
1例目は研修医Aさんです。
Aさんは、多忙の中、時間を見つけて病院見学を強行。モチベーションは素晴らしかったのですが、疲労に負け、カンファレンスでうっかり寝てしまいました。結果は不合格。後日、担当者に聞いたところ、うたた寝が不採用の原因とのこと。病院見学で取り返しのつかない失敗は本末転倒です。無理のないスケジュール調整をしたいところですね。
2例目は研修医Bさんです。
Bさんは沖縄県某ハイパー病院に勤務していました。「専門研修は関東の病院で受けたい」。そのようにご相談をいただきました。
千葉県の市中病院がBさんの希望とマッチしていたので、病院見学をご案内。しかし都合が合わず、病院見学の直前にスケジュール再調整に。仕切りなおして別日をご案内するも、再び急な仕事が入って再々調整となりました。
このような形で何度か調整をくり返し、ご本人と病院の関係が気まずくなり、結局見学自体がなしになってしまいました。
お二人とも病院見学以前のスケジュール調整の時点で、失敗しています。こんな事態にならないよう、病院見学では万全のスケジュール調整を行いましょう。
聞いておきたいこと・NGな質問
HPやパンフレットに書かれていることは聞かない
初期研修のマッチング対策で目にした方も多いことかとは思いますが、病院HPやパンフレットに書かれていることをそのまま質問するのは避けましょう。「当直は何回ですか」「給与はいくらですか」などの質問。このような質問は、病院探し以前の常識の問題。「あらかじめ調べてから来てよ」と思われないように質問してください。
聞きたいこと 聞き方
当直の回数は?→「●●先生の当直は処遇通り月4回程度ですか?」
定時は何時ですか?→「定時は18時ですが●●先生は実際、何時に帰っていますか?」
上記のような聞き方は当然のマナーです。くだけた場面でも、表現を考えて質問することを意識してください。
「何も問題はありません」そんな答えは要注意
病院側の姿勢や専攻医への対応法を伺い知る質問もあります。採用担当者に、次のような質問を投げかけてみましょう。
「退職した専攻医はいますか」
「休日は処遇通りに取れますか」
「今後、改善点や変更予定などの項目はありますか」
このような質問は、採用担当者にとって答え方が難しいものです。
「専攻医の退職は過去1名だけいました。退職理由は、本人が他にやりたいことが見つかったためと聞いています」
「定時に帰るようお願いしていますが、病院に残って自己研鑽を積みたい研修医が多いようです」
「働き方改革で土曜日出勤を見直したいと思っています」
こういった誠意ある回答や真実をしっかり伝える回答なら問題はありません。
しかし、しっかり向き合っていない回答だと、注意が必要です。
特に、医療業界やネット上のウワサやニュースがある病院だと気になりますよね。
もし、なんらかのウワサが回っている病院で、「退職者はいません」「処遇通りです」「改善点はない。何も問題はありません」など、きっぱり断言するようなら要注意。本当に何もなければいいのですが、デマやウワサ、過去の失敗などの対処がお粗末な場合は、入職後に苦労するかもしれません。