医学生から見た研修医は「忙しくて大変そう」「上手くやっていけるのか」「プライベートとの両立は可能なのか」といったイメージで、不安を抱えている方が多いのではないでしょうか。また、研修医の働き方のイメージができず、どのようなスケジュールで働くか、どのくらい忙しいのか想像もできない方もいるかもしれません。
今回は、研修医がどのタイミングで、どのような要因によって忙しくなるのか、実際の研修医のスケジュールを紹介しながら解説します。また、医師の働き方改革によって働き方がどう変わるのかも解説するので、参考にしてみてください。
研修医が忙しい要因はタイミングや環境による
多忙で激務をこなしている研修医がいる一方で、実際には時間に余裕がある研修医もいます。また、一人の医師の研修期間でみても、研修医と呼ばれる間の忙しさには波があります。
研修医の年度によって忙しさが変わる
ひとことで研修医といっても、研修医になってからの年度、つまり初期研修か後期研修医かによっても忙しさは異なります。初期研修とは、国家試験に合格した次の年度から始まる医師として必要な技術や知識をさまざまな科をローテーションしながら身につける2年間のことです。
1年目ははじめて研修先の病院に勤務し、社会に出た状態のため、慣れるまで苦労が絶えないでしょう。勉強すべき事項や準備する事項も多いため、勤務後も自由な時間が少なくなる状況も考えられます。2年目は初期研修医としての生活に少し慣れるため若干落ち着くかもしれません。しかし、後期研修を目前に控え、自分の専門性を模索し、どこの医局に所属するか決めるタイミングです。研修の傍ら、病院の情報を収集したり、見学したりする必要があるため、後期研修先が決定するまでは忙しいでしょう。
初期研修が修了した後は、後期研修、つまり専攻医の期間がはじまります。後期研修は初期研修とは異なり、専門医資格や専門技能を取得するための研修であるため、専門的な責任のある業務や、下っ端ではないからこそ任せられる範囲が広がり、雑用が増えます。したがって、個人差はありますが3年目が一番忙しいといわれる時期です。
3年目の専攻医の業務は、初期研修医が帰宅した後に病棟業務や翌日の外来、処置の準備を行って患者やその家族への説明をしたり、救急外来や病棟急変のコールを受けたりします。コールを受ける機会は増えて、病院によってはすべてのコールを最初に専攻医が対応することになっている場合もあります。
研修先によって差がある
研修医の忙しさは、業務量のちがいなどから、研修先の病院によっても差があることは事実です。一般的には、大学病院勤務が忙しいといわれています。大学病院では、医局の業務や雑用、教育や研究など担う役割が多いためです。さらに病棟での点滴や搬送などの市中病院ではほかの職種の方がおこなう業務を医師がおこなうケースもあり、負担が増加しています。
また、研修病院における救急外来業務の多さも忙しさを左右する要因です。救急外来の忙しさは、救急車の受け入れ台数や、受診患者数など、公表された情報からある程度推測することができます。病院の公式サイトや研修病院紹介サイトなどを確認し、研修先の参考にするのも良いでしょう。
一般的に忙しいという声の多い診療科
初期研修医はさまざまな診療科をローテーションしているうちに、診療科ごとに忙しさが異なると肌で感じることになります。ここでは、初期研修前の心構えとしての参考にもなる忙しい診療科の紹介、解説をします。
外科系と呼ばれる診療科(一般外科、脳神経外科、整形外科など)
外科とは、手術によって治療する病気を主に診る科です。
外科系の診療科では、長時間の手術に入ったりその間の病棟管理を担当したり、手術直後の術後管理のために待機時間が長くなったりします。また、手術が必要な急患が運ばれてきたときには緊急手術に入ることもあります。そのため、落ち着ける時間は少なく、勤務時間が長くなることが多くて予定が立てにくい傾向があります。
救急患者の数や重症度、手術の件数によって忙しさの程度は病院によって異なります。また、病院によっては主治医制でなくチーム制で患者を担当し、仕事を分担して働きやすい体制を組んでいる病院もあります。したがって、すべての外科系が忙しいとは限りませんが、忙しい研修医生活になる可能性は高いといえます。
救急科
救急科は、ひっきりなしにやって来る急患や救急車の対応にあたるため、忙しい可能性が高いです。病院によって異なりますが、患者の重症度も高く、命の危険のある患者を担当することも多いでしょう。時間的な負担のみならず、精神的な負担も大きい診療科です。
基本的に救急部は24時間患者対応があるため、日当直や時間外労働も多くなりがちです。そのうえ救急部で病棟やICUを併設している病院で勤務した場合、病棟管理や転院調整も入ってくる可能性があります。
厚生労働省の統計によると、医療施設に従事する全医師のうち、救急医の割合は1.2%であり、増員が必要とされています。このように人員が不足して従事している医師が多忙になっていることも救急科の忙しさの原因のひとつといえます。
参照:H30統計の概要|厚生労働省、必要医師数実態調査詳細結果|厚生労働省
研修医のスケジュール
研修医はどのようなスケジュールで動いていて、実際にどの程度忙しいのでしょうか。
さまざまな病院に務める研修医に聞いたり見学したりしなければ、実感を持つことは困難です。
ここでは、研修医の実際のスケジュールをご紹介します。研修医の忙しさのイメージを把握する上で参考にしてみてください。
(循環器)内科専攻医の場合
通常の平日、カンファレンスがある日の例
7:30 | 病院到着 |
---|---|
8:00 | カンファレンス |
9:00~ 12:30 |
カテーテル治療(合間に病棟業務、書類仕事) |
13:30~ 18:30 |
カテーテル治療(合間に病棟業務、書類仕事) |
19:30 | 帰宅 |
【専攻医の声】カテーテルが14:00、15:00あたりに終わり、空き時間を病棟業務にあてられる日もあります。 また、カテーテルが18:00、19:00までかかることもあり、カテーテル終了後病棟業務にあたるため、終業が遅くなることもあります。
リフレッシュ方法
【専攻医の声】終業後は同僚と食事を楽しむこともできます。休みの日は都心に出たり、ドライブをしたりして積極的にオンオフを切り替え、リラックスすることを大切にします。海に近い病院ではサーフィンや釣りを趣味にする方も多いですよ。
整形外科専攻医の場合
救急の受け入れの多い、地方の急性期病院の例
8:30 | カンファレンス |
---|---|
9:30 | ドクターカーや民間救急ヘリで上級医と組んで出動。 |
12:00 | 食堂で昼食 |
13:00 | 病棟業務 |
15:30 | 緊急手術 |
17:30 | 帰宅 |
【専攻医の声】ドクターカーや民間救急ヘリで上級医と組んで出動する際に緊急度の高い場合は、ドクターカーを出し、救急車と合流した場所でトリアージを行うこともあります。できるだけ定時で帰宅できるよう、協力して仕事を終わらせています。
リフレッシュ方法
【専攻医の声】病院の周囲に自然が多い病院のため、ダイビングやゴルフ、登山や温泉めぐり、グランピングなどさまざまなレジャーで息抜きする方が多いです。平日に効率よく仕事をして、時間外を息抜きや趣味にあてられるように工夫しています。
忙しい研修医の環境改善となるか?
医師の働き方改革で変わること
医師の働き方改革とは、2019年におこなわれた働き方改革が、5年の猶予期間を経て医師にも適応されるようになることです。医師の長時間労働を是正するように勤務時間制限が定められるため、長時間の連続勤務がなくなるなどの労働環境の変化が期待されています。
労働時間が管理され、長時間労働を防ぐ
医師の働き方改革によって医療機関は、担う機能や働く医師の特性で
A水準、連携B水準、B水準、C-1水準、C-2水準
働き方改革以前は、管理者から把握されていない医師の長時間労働によって医療機関の運営が支えられてきたという一面もあります。しかし今後は、医療の安全性を高めるためにも上記のように労働時間が明確化され、長時間労働を防げるように管理されます。
医師に負担がかからない形で、医療機関の運営が行われるような体制が今後整えられれば、理想的といえます。
医師の追加的健康確保措置の実施を義務化
医師の働き方改革によって、月100時間未満の上限時間を超えて働く医師がいる場合、病院側に追加的健康確保措置の実施が義務化されるようになりました。具体的には、偏った長時間労働を減らす対策、面接指導などが求められます。
基本となるA水準の病院では、以下のような措置が義務化されます。
●連続勤務時間制限28時間
●勤務間インターバル9時間(終業時刻から次の始業時刻までの休息時間)
●代償休息(休憩時間にやむを得ず仕事に従事した労働時間と同じ時間の休憩時間)
当直明けに連続して勤務したり、深夜まで働いた翌日には早朝から働くことのないように病院側で調整する必要があります。こうした措置によって、時間外勤務の多い研修医も休息を十分にとれるよう配慮されるようになるでしょう。
研修医の忙しさを乗り越えるコツ
病院や診療科、年度によって異なるスケジュールをこなしながら健康的に研修生活を送るためにはどのようにしたらよいのでしょうか。研修医の忙しさを乗り越えるコツを解説します。
経験不足はしょうがない!自分に期待しすぎない
研修医は医療の現場に出たばかりの新人であり、経験値が少ないのは当然です。
医学部で学生として身につけた技術や知識は教科書の知識であり、臨機応変な臨床の現場ですぐに役立てるのは難しいです。
知識や技術をつなげ、臨床現場で使えるものとするため学ぶ期間が「研修医」です。
ストレスが増える原因には、指導医からのフィードバックや、先輩医師や同期と自分を比較してしまうことがあります。乗り越えるためには、自分に過度な期待やプレッシャーを与えず、ゆっくりと成長していこうと意識することです。自分のペースで学びやすい環境を整えられるとよいでしょう。
自己管理も忘れずに。自分のからだを大切にしよう
研修期間は多忙で、初期研修から専攻医まで含めて3〜5年忙しさが続きます。働き方改革が進むとはいえ、労働時間は長く、一人前の医者になるには体力が必要です。有意義な研修生活を送り、その後長く活躍するために、自身のからだを大切にしましょう。忙しい中でも食事や睡眠をなるべく欠かさずにとるようにし、自分に合ったリフレッシュ方法を身につけることがおすすめです。
医師の方の病院探しはシーメックにお任せください
診療科や病院により忙しさは大きく左右されます。どのような働き方がしたいのか、どの診療科に興味があるのか、希望に合う病院を上手に選ぶ必要があります。また、初期研修医の間に、自分に合う研修病院、後期研修プログラムを選ぶために情報を集めるのは大変です。
シーメックのコンサルタントが、豊富な情報をもとに要望を踏まえておすすめの病院をご提案します。忙しい研修生活を有意義にするため、最適な病院を一緒に探しましょう。
まとめ
研修医の忙しさは、研修期間のタイミングや勤務先の病院、診療科によってさまざまです。個人差もあるため、周りの同期が大丈夫そうだから、自分も大丈夫ということもありません。今後は医師の働き方改革によって、研修医の労働環境の改善が期待できますが、無理せずに自身のペースで研修期間を充実させましょう。シーメックのコンサルタントにご相談いただければ、自身にとって最適な医師キャリアを選択するための手助けをさせていただきます。