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製薬業界のメディカルドクターとして活躍できる道【Vol.1】メディカルドクターの役割について|臨床医師のキャリアパス

メディカルドクターの役割について

臨床医師にもまだあまりよく知られていない仕事のひとつに、製薬業界での勤務があります。より安全でかつ有効な治療薬を開発し販売する過程において、医師としての専門性が必要とされる領域があります。多くの患者さんの医療に貢献できる遣り甲斐と、さらには、ワークライフバランスの良さも特長。

そこで、今回から2回に渡ってメディカルドクターの実態について、製薬業界で長く勤務し、現在は多数の医師を製薬業界に紹介した実績を持つヒューマンダイナミックス社の堤康行氏に、メディカルドクターの業務内容や雇用条件、また現在製薬業界で活躍されているメディカルドクターの実例について、お話を伺いしました。

プロフィール

株式会社ヒューマンダイナミックス 代表取締役 堤康行氏

ノバルティス、イーライリリーおよびCRO *1 のパレクセルで、主に臨床開発とメディカルアフェアーズ部門に所属し、約30年間にわたり各部門のメディカルドクターと業務を共にする。製薬会社およびCROでの業務内容のみならず、近年の製薬業界動向や雇用条件も含めたクローズ情報に精通。その確かな経験と豊富な情報をもとに、製薬業界への医師転職サポートを行う。

*1 CRO:Contract Research Organization(開発業務受託機関)製薬会社と契約して臨床開発などの業務を受託する会社

第1回目の今回は、メディカルドクターの業務内容と一般的な雇用条件について、“メディカルドクター基本情報”をお伺いしました。

製薬会社で勤務されているメディカルドクターはどのような業務を担当するのですか?

製薬会社でメディカルドクターが活躍する主な部門は、①臨床開発、②安全性情報、③メディカルアフェアーズになり、それぞれの部門が担う役割と、その部門でメディカルドクターが担当する主な業務内容は次のとおりになります。

① 臨床開発

当局(PMDA *2)が要求するさまざまな承認要件を満たしながら、臨床試験(第一相から第三相試験)を企画・実施し、製造販売承認を取得する。
所属するメディカルドクターは、主に以下の業務を担当する。

1. 対象となる疾患領域の専門医師(KOL)の意見を治験に反映させるため、KOLと情報交換する。 2. 臨床開発計画や、臨床試験に必要な資料(プロトコール、同意説明文書など)に対して、医学的な観点からコメントする。 3. 臨床試験の実施中に発生した副作用などへの対応を指示する。 4. 試験結果の論文や製造承認申請資料の作成に参画し、医学的な観点からコメントする。 5. 海外の本社・支社に所属する医師とともにグローバルメンバーとして会議などへ参画し、日本の医療状況や規制などについて協議する。

*2 PMDA(Pharmaceuticals and Medical Devices Agency):医薬品医療機器総合機構の呼称。厚労省の外郭団体で、安全性評価や新薬の承認などを審査する。

② 安全性情報

有害事象情報を収集・評価し、PMDAや医療機関に報告するとともに、新規開発薬剤の臨床試験における安全性情報を検討・解析し、副作用の発生を減らし重篤化させない対策(リスクマネージメント)を立案する。
所属するメディカルドクターは、主に以下の業務を担当する。

1. 治験薬および市販薬の使用に伴い発生した有害事象、文献や学会などで発表された有害事象について、因果関係と重症度を評価する。 2. PMDAへ報告される安全性情報の作成や添付文書の改訂作業に参画し、医学的な観点からコメントを行う。 3. 治験の実施中やその後に報告された副作用情報から、予測される副作用の頻度と重症度を最小化するためのリスクマネージメントプランを立案する。 4. 新薬の販売とともに実施が義務付けられる 製造販売後調査(Post Marketing Surveillance:PMS)に対して、実施計画書の計画・作成に参画するとともに、集計結果に対して医学的な観点からアドバイスを行う。

③ メディカルアフェアーズ

研究開発やマーケティングなどの社内関連部門と協力し、高度な医学・科学的な知識を基に医療従事者と情報交換することにより、製品価値の最大化に貢献する。
所属するメディカルドクターは、主に以下の業務を担当する。

1. 医療現場でのアンメットメディカルニーズを収集し、社内関連部署に提供することで、新薬の研究開発やマーケティング戦略に活かす。 2. 医薬品の医療における価値を最大化するためのメディカル戦略を立案し実施する。 3. 臨床研究又はデータベース研究などによるエビデンスの創出を行う。 4. 医療現場に提供する資材の医学・薬学的観点からの評価や確認を行う。 5. 「臨床研究に関する倫理指針」を遵守し、臨床医師が実施する医師主導型臨床研究をサポートする。 6. メディカルアドバイザリーボードなどの会議を立案および開催する。 7. 社内関係者への医科学的教育を行う。

製薬会社でのメディカルドクターの待遇や雇用条件はいかがでしょうか。

製薬会社での一般的な雇用条件は以下のようになります。

勤務体系
フレックスタイム制度、在宅勤務制度を導入している。
休日・休暇
土日の週休2日、有給休暇
※有給休暇の消化率は高く、連続休暇の取得も可能。
※産前産後・育児休業制度も充実している。
収入額
月収の12ケ月分+賞与(+業績賞与)の年収額で提示され、 初年度の額(製薬業界での勤務未経験の場合)は、一般的に1200〜1800万円。
諸手当
上記年収額とは別途に、通勤手当、住宅手当などの手当てが支給される。 また、専門医の資格維持などのため、臨床診療への従事も可能。

上記のように、勤務時間ならびに勤務場所を選択できる自由度が大きく、また、休日に勤務した場合は代休を取得できますので、週2日の休日を確保できます。これらの制度を利用することにより、育児などと両立しながらの勤務がよりしやすくなります。

これまでに製薬会社への転職にお手伝いをされた医師の例を教えてください。

比較的若くして、製薬会社へ転職された先生の例をご紹介します。

A医師(製薬会社入社時:27歳)

リウマチ内科専攻医として基幹病院で勤務されていたが、ご自身のキャリアプランとしては臨床診療の経験として4年を一区切りと考えられていたことから、製薬会社への転職活動を開始されましたが、臨床医としての経験が浅いとの理由で希望された職種とは別のメディカルアフェアーズで主に医療機関へ情報提供するMSL職を打診され、それに同意されて外資系製薬会社に入社された。入社後はMSLとして担当領域の専門知識と製薬会社での勤務に必要な知識を習得され、入社半年後には海外本社での勤務も経験され、帰国後はメディカルアフェアーズのメディカルドクターとして、現在は担当製品の価値を最大化させるデータの創出業務で活躍されている。

B医師(製薬会社入社時:31歳)

内分泌内科とし勤務されていたが、臨床以外でこれまでの経験を活かせる場を探しておられたことから、専門医の資格習得を機に外資系製薬会社のメディカルアフェアーズに入社され、入社後3年目の現在はサイエンスリードとして臨床研究論文の作成などで活躍されている。

C医師(製薬会社入社時:32歳)

麻酔科医として勤務されていた際に新薬の臨床試験に参加されたことから製薬会社の業務に関心を持たれ、適切な情報提供を行うことで医療に貢献したいとの思いから内資系大手製薬会社の安全性情報に入社され、現在はメディカルインフォメーション業務で活躍させている。

ワークライフバランスを図りやすい製薬会社のメディカルドクターですが、キャリアの選択肢の1つとして魅力的ではないでしょうか。しかし、全く経験のない環境のなかでの仕事に疑問は尽きないもの。そこで次回は、いろいろな疑問に対して、実際に勤務されているメディカルドクターからの回答も含めてお聞きしてまいります!

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