前回は、「メディカルドクターの業務内容や雇用条件、また現在製薬業界で活躍されているメディカルドクターの実例について( vol.1 )」を紹介しました。Vol.2では、実際に勤務されているメディカルドクターからの回答も含めて、メディカルドクターに関するさまざまな疑問にお答えします。
解説は、製薬業界で長年勤務し、現在は医師を製薬業界に紹介しているヒューマンダイナミックス社の堤康行氏です。
株式会社ヒューマンダイナミックス 代表取締役 堤康行氏
ノバルティス、イーライリリーおよびCRO * のパレクセルで、主に臨床開発とメディカルアフェアーズ部門に所属し、約30年間にわたり各部門のメディカルドクターと業務を共にする。製薬会社およびCROでの業務内容のみならず、近年の製薬業界動向や雇用条件も含めたクローズ情報に精通。その確かな経験と豊富な情報をもとに、製薬業界への医師転職サポートを行う。
* CRO:Contract Research Organization(開発業務受託機関)製薬会社と契約して臨床開発などの業務を受託する会社
メディカルドクターのお仕事Q&A
どんなキャリアを歩めるか
Q1 医師免許を取得後、何年目から応募できるのでしょうか?
一般的には3~5年以上の臨床経験を求められます。年代としては専門医あるいはPhD取得後の30歳代で製薬企業へ転職、活躍される医師が多くなっています。
Q2 小児科医の需要はありますか?
他の診療科に比べて求人数は少ないものの、需要はあります。なかでも、小児のがんや自己免疫疾患などで薬物療法の経験を積んでいるメディカルドクターは有利になりやすいです。小児の臨床経験が非常に豊富かつ多彩だと、安全性情報部門の求人と相性がよくなります。
Q3 外科系の診療科から製薬会社に転職した事例はあるのですか?
心臓血管外科、消化器外科、脳外科や小児外科の先生が製薬会社へ転職された例があります。
Q4 製薬会社へ入社後も、臨床を継続することは可能ですか?
ほとんどの製薬会社は臨床診療の兼業を認めています。勤務条件などについては、入社後の上司と相談されることをお勧めします。兼業が可能な場合は、毎週1日(主に土・日曜日)は臨床業務に携わっている方もいらっしゃいます。
Q5 メディカルドクターのキャリアパスはどうなるのでしょうか?
部下のメディカルドクターをまとめる管理職、各部門の部門長、さらには経営者として社長などに就任するチャンスがあります。欧米と比べると、日本の製薬会社で勤務するメディカルドクターの数はまだまだ少ないのが現状です。しかし海外では主な管理職のポジションはメディカルドクターが就いていることが珍しくありません。
Q6 製薬会社に勤務後、臨床医に戻ることはできますか?
可能です。実際、臨床に戻られた方もおられます。
Q7 臨床開発担当として製薬会社に入社後、メディカルアフェアーズや安全性担当に異動する可能性はありますか?
本人の希望が優先されると思いますが、より幅広い経験を積むことを期待して他の部門に異動する可能性はあります。
Q8 製薬会社の女性管理職は割合的にどの程度でしょうか?
2021年の調査によると、女性管理職の比率は12.5%です。内資が約10%、外資は25%という結果です。(日刊薬業2021/4/21)
向いている人
Q9 募集が多い診療科はありますか?
診療科については、内科系および外科系など薬物療法を行う科が対象になります。
Q10 どの程度の英語力が必要でしょうか?実際によく使うのでしょうか?
製薬のビジネスはグローバルに展開するので、英語力はさまざまな場面で必要です。例えばメールのやり取り、海外との電話やオンライン会議、海外の会議参加など。メールの約半数はメールになりますし、報告書の作成など英語を使った読み書きが必要になります。海外とのオンラインミーティングの機会もあります。私の経験上、多くの先生方は、業務を行う中で英語が上達されています。英会話の社内トレーニングを提供していることもありますから、それらを利用しながら、英語力を磨いていく流れになります。
Q11 仕事の魅力、やりがいはどのようなところにありますか?
一人の臨床医が治療できる患者数は限られます。対して製薬会社では、新薬開発や医薬品に関する的確な情報を提供することで、全世界の治療に貢献できます。その点には、大きなやりがいを覚えることでしょう。新しい治療薬の開発や治療方法の検討に関わることができるのも魅力になるのではないでしょうか。
Q12 医学的な専門知識以外で、メディカルドクターにはどのような能力が必要になりますか?
社内外の関係者とのコミュニケーション能力や交渉力、リーダーシップ能力、チームプレイヤーとしてチームに貢献できる能力の他、優先順位を考えて業務を行うことも大切です。
Q13 製薬会社で勤務するメリットは?デメリットは?
メリットとしては、ワークライフバランス(当直なし、有休消化、週休2日、フレックスタイム、テレワーク)、処遇面(収入、福利厚生、研修制度)、幅広いキャリアプランの選択肢(上位の職位、経営者、海外ポジション)、臨床診療を継続できる可能性、そして、より大きなやりがい(全世界の多くの患者様の治療に貢献)などが考えられます。
デメリットとしては、会議などの医学的な専門業務だけではなく、他の仕事もしなければならないことです。また、学会によっては専門医資格の維持が難しい、複雑な手順・規則(SOP、マニュアル、法規制等)が多い点もデメリットに挙げられます。
Q14 転職する上で身につけておきたいスキルはありますか?
英語力があればなお良いですが、PC操作以外では必要とされる知識やスキルは特にありません。入社後にそれぞれの業務に必要なスキルを身につけられるかが重要になります。
Q15 海外留学の経験は製薬会社転職にプラスでしょうか?学位も取得していたほうが有利になりますか?
留学経験は、語学だけでなく異文化コミュニケーションを経験されている点でプラスになります。学位は必須ではありませんが、専門性を示す面では有利になります。
Q16 転職に関して有利に働く要素について教えてください
薬物治療に関する豊富な臨床経験が望まれる場合が多いです。また、治験や臨床研究の経験があると有利になります。
ワークライフバランス
Q17 海外で活躍できるチャンスはありますか?
海外本社あるいは支社へ1年前後のshort stayとして赴任するケースが一般的です。なかには、入社した日本法人の会社を一旦退職し、同社の海外本社へ転籍された例もあります。
Q18 子育てとの両立は可能でしょうか?残業や出張はどの程度発生するのでしょうか?
フレックスタイムや在宅勤務制度を活用して子育てと両立して活躍されている先生はおられます。残業については、ピーク期や、海外とのやり取りで早朝や夜間対応で発生します。 出張の頻度は所属する部門で異なり、安全性情報では少なく、メディカルアフェアーズでは多い傾向です。しかし昨今はオンラインでのやりとりが増えてきているので、その頻度は低くなっています。
Q19 収入はどの程度でしょうか?
入社初年度の年収額としては、未経験で1200~1800万円が一般的です。次年度以降は昇給が期待できます。
Q20 どのような理由で製薬会社へ転職される先生が多いですか?
ワークライフバランス(work life balance)を重視して転職する方が多くいます。医療現場で体力的および精神的な負担、子育て中の女性医師にとって当直やオンコールがキャリア継続の大きな壁だという声もよく耳にします。ほかにも、医局人事による転勤に悩み、私のところに相談に来られる医師も増えています。
Q21 1週間の勤務日数は何日になりますか?
週5日の勤務になりますが、平日の1日を臨床研究日(臨床医としての勤務日)として認めている会社もあります。
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